「大体、何でオレがこんな格好をしなくてはいけないんだ?」
 窮屈そうに、しかし、足元は涼しげにしながら、彼は不満の声を上げた。
「そうかなぁ。僕は、可愛いと思うよ」
 我ながら、名案だと思う。文化祭に感謝だね。
 抱きしめたいのを我慢して、僕は彼を椅子に座らせると、赤いリボンでその髪を結い始めた。
「うん、うん。似合ってるよ、手塚」
 英二も、異論はないようだ。
「ビデオ、ビデオ…」
 乾なんかは、完全にノっている。それもそのはず。彼は、傍観者になれる位置にいる。その正体は、僕の共犯者。
「……って。お前らはそれでいいのか!?」
「手塚、動かないで。」
 身を乗り出そうとする手塚を制す。彼は、すまん、と呟くと椅子に座りなおした。
 ……そんなに厭なら、もっと抵抗すればいいのに。
 素直すぎるというのも、考えモノだ。これじゃあ、ゴーカンされても文句は言えない。って、そんなことをするのは、僕くらいかもしれないケド。
「で。どうなんだ?不二、菊丸。お前らは乾の提案に文句はないのか?」
 手塚は口を尖らせると、乾を睨んだ。手塚の後ろに立っている僕は、彼の顔を見ることは出来なかったけれど、乾が怯んだのを見てどれほど怖い顔をしているのかは予想できた。
 ……ゴメン、乾。首謀者は僕なのに。
「僕は平気だよ。結構似合ってるでしょ?」
 言うと、僕は手を止めて手塚の前に立ち、くるりとまわって見せた。英二が煽るように口笛を吹く。
「ね。手塚。可愛い?」
「ばっ、か………かわ、い、い。が」
 もごもごと口篭もったが、僕にはちゃんと手塚の言っていることが聞き取れた。その言葉に満足した僕は、英二の方へと視線を向けた。
「英二は?こういうの、厭?」
「へっへー。俺、姉ちゃんに遊びで着せられたことあるから、ぜーんぜん平気。俺も結構似合うっしょ?」
 英二も僕がやったようにくるりと1回転した。うん。可愛い。
「それで大石に迫ってみれば?落ちるかもよ」
「マジ?マジ?」
 僕の言葉に、英二が目を輝かせる。僕はクスリと微笑うと、頷いた。
「うん。僕が言うんだから、間違いないよ。多分、今、部室に1人でいると思うから。行ってみれば?」
「わかった。サンキュ、不二!」
 僕の言葉を鵜呑みにして、彼はこの会議室から駆け出して言った。勿論、その姿のままで。
「……いいのか、不二」
「何が?はい、出来たっと」
 リボンを結い終えた僕は、彼の肩を軽く叩いた。彼は少し前のめりになったあとで振り返ると、僕を見て大きな溜息をついた。
「大石に怒鳴られるぞ」
「何?心配してくれるの?」
「馬鹿」
 彼の顔が、一瞬で赤くなる。それを振り払うように咳をすると、僕から眼をそらした。けれど、彼が移した視線の先にいるのは、乾で。
「……珍しいな。手塚が照れるなんて」
 耳まで真っ赤にしたその顔を、乾のビデオに収められてしまった。
「乾、そのビデオ、あとでダビングして僕に頂戴ね」
「わかってる」
「不二っ、乾っ!」
 僕たちのやりとりに、手塚は声を荒げた。顔はまだ赤い。あんまり虐めちゃうと、可哀相かな。
 僕は手塚をなだめると、乾に目配せをした。
 計画通り。
 乾は小さく頷くと、咳払いをして立ち上がった。
「じゃあ。俺はそろそろ行くとするかな」
「………どこへ行く気だ?」
 乾のわざとらしい言い方に、何かを感じたのだろうか。手塚は訝しげに乾を睨んだ。
 けれど。そこらへんは打ち合わせ通り。
「英二のところだよ。上手くいってれば、大石と英二の面白い画が録れる」
 乾は不敵な笑みを浮かべると、唖然としている手塚と今にも笑い出しそうな僕を残して、会議室を出て行った。勿論、出掛けに鍵を閉める事も忘れない。
 あとで、乾には何かお礼をしなきゃな。例えば、海堂のマル秘ショットとか。まあ、それは後々考えるとするか。
 今は、目の前の人物に集中しないとネ。
「ねぇ、手塚」
 僕はありったけの甘い声を彼の耳に吹きかけると、後ろから両腕を伸ばし、きつく抱きしめた。
「な、何だ?」
 僕の顔がすぐ横にあるから、振り向けない。手塚は眼だけで僕を見た。戸惑いの色が現れてるその眼。凄く、イイ。
「何で僕がこんなこと提案したか、わかる?」
「………」
「………」
「………なっ!?」
 気づくの、遅いよ。
 僕は彼の胸元で縛られていたスカーフを解くと、それを彼の目の前に持ち上げた。これからすることをわからせるように彼の目の前でそれを2,3度往復させる。
「乾が1人でこんなこと考えるはずないじゃない。キミのこんな姿を見るコトを許されているのは、本来なら僕だけなんだから」
 スカーフを指から滑らせるようにして床に落とした。それを合図に、彼が僕の腕の中で暴れだした。
「無駄だよ、手塚。鍵はさっき乾が閉めちゃったからね。それとも、キミはこんな姿で僕に襲われてるのを見られたいの?」
 耳元で囁くようにして言うと、彼は大人しくなった。かわりに、鋭い眼が僕の方へと向かってくる。でも。そんな姿でそんな眼をされても、全然怖くないよ。寧ろ。
「挑発してる?」
「ばっ…」
「莫迦だよ。僕は。キミの前なら何処まででも堕落しちゃうんだ」
 クスリと微笑うと、僕は彼の首筋に舌を這わせた。
「………っ不二。」
「何?」
 彼の言葉に顔を上げる。と、頭を掴まれ、強引に引き寄せられた。唇が重なる。
「…………手塚?」
 彼の予想外の行動に戸惑う僕を見て、彼は何処で学んだのか知れない不敵な笑みを見せた。
「オレも。とことん馬鹿だ」





遊び過ぎですか?想像してみましょう。
……てぢゅか、可愛いよ。菊丸も可愛いよ。不二くんも可愛いよ。
不二総攻なアタシ的には乾とタカさんにも着て欲しいですけどね。セーラー。
ちなみに、2年の文化祭なので、リョーマくんはいません。(だって3年になってからぢゃ、引退…)



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