「桃って。結構、暇人なんだね」
不二は桃城の手から白いカップと箸を受け取ると、クスクスと笑った。
桃城が、頬を膨らます。
「不二先輩が食べたいって言ったから、俺、わざわざ調べたんスよ」
大変だったんスから、と呟く。
「うん。知ってる。でも、賭けをしようって言ったのは桃だよね」
「そうっスけどね」
「それで。負けたのも、桃」
「……それも、そうっスけど」
弱々しく呟き目線を下げていく桃城を見て、不二は苦笑した。
箸を持ち、一口食べる。
「でも。その甲斐あったね。おいしいよ。ありがと」
桃城の顔を覗き込むようにして、微笑った。
「は、はいっス!」
妙な返事。真っ赤になった桃城の顔を見て、不二は笑った。
「……初デートがコンビニデートっていうのも、学生らしくて、なかなかいいよね」
振り返り、後ろの明かりに向かって呟く。
「不二先輩、それって…」
不二の呟きが、恐らく聞こえていたのであろう。桃城は顔を真っ赤にしたままで訊いてきた。
視線を桃城に戻した不二が、意味深に微笑む。
「ん?何?」
わざとらしい訊き返し方だ、と桃城は思った。が。
「えー…っと。何でもないっス」
その先を言葉にする勇気のない桃城は、大袈裟に手と頭を振った。
「変なの」
楽しそうに不二が微笑う。
そんな不二をズルイと思いながらも、桃城は自分の情けなさに項垂れた。
……情けねぇな、情けねぇよ。
大きな溜息が出る。
その意味を知ってなのか、不二はクスクスと楽しそうに笑った。
「さて、と。寒くなってきたし、早く食べて帰ろっか。僕の部屋に」