「いい加減にしてくれないかなぁ」
腕を組み、溜息を吐く。その気だるそうな仕草が、堪らなくイイ。
「僕も裕太も迷惑してるんだよね」
眼だけでボクを睨む。その冷たい視線も、堪らなくステキ。
「いいかい?これ以上僕たちに付きまとうようなら」
言葉を切ると、彼は腕を解いた。その腕がボクに向かって伸び、胸倉を掴む。
引き寄せられる。その、白く、力強い腕に。
鼻先10センチくらいのところまで顔が近づく。彼の蒼い眼は確実な殺意を持って僕を睨んでいた。
「………殺すよ?」
口元に笑みを浮かべると、彼は乱暴にボクから手を離した。
「痛っ…」
壁に強かに頭をぶつけたボクは、その場にしゃがみこんだ。
頭上から、彼の視線を感じる。
馬鹿なことに、こんな状態でもボクは彼のことが好きだと感じてしまう。
俯いたままの顔は真っ赤だし、心臓だってバクバクいってるし。緊張からか、手も、少し震えてる。
「何か、言い返すことはないの?」
冷たい彼の声。ゾクゾクしてしまう。
きっとボクを見ている彼の眼は、とても冷たいのでしょうね。そんな期待。
ボクは恐る恐る顔を上げた。
「………っ。」
背中に電流が走った。言葉を、失う。
そこにあったのは、想像以上に残酷で綺麗な、彼の眼。
嬉しさにか、体が震える。ボクは深呼吸を繰り返し、何とか震えを抑えると、壁にもたれながら立ち上がった。
彼と見詰め合う。
「………あるんでしょ?言いたいこと」
ドクンドクンって、心臓の音が煩い。緊張から、喉が渇く。
「ボクはっ…」
自分の口から出てきたのは、驚くほど掠れた声。
彼から目線を外し、咳払いをする。
大丈夫。きっと、大丈夫です。
自分に暗示を掛けると、ボクは彼をもう一度見た。
「なんだい?」
「ボクは…不二クンが好きですっ!」
「…………今、死ね。」
暫くの沈黙の後、その言葉と共にボクの腹をえぐった彼の膝に、ボクはこの上ない愛を感じた。