「……不二。それ、どうしたんだ?」
「んー。猫助けたら轢かれた」
「何に?」
「車に」
「誰が?」
「僕が」
 にこにこと微笑いながら、不二は自分の鼻の辺りを指差した。そのあっけらかんとした様子に、拍子抜けする。
 溜息。
「何でもっと早く連絡しなかったんだ?」
「大したことなかったし。君に心配かけたくなかったしね」
「…………。」
「手塚?」
「心配くらいかけさせろ、馬鹿」
 不二の手から鞄を奪い、片手にまとめる。
「………ごめん」
 俯いたまま、不二は呟いた。
 また、溜息が出る。
 心配くらいかけさせて欲しいものだ。いつもいつも、不二はオレの心配ばかりをして。オレだって、不二の想いの強さに負けないくらい不二のことが好きなのに。
「でも、引退した後でよかったよね。君が居なかった時に僕まで欠場になったら、大変だもの」
「よくはない。お前が怪我をしたことに変わりはないのだから」
「………怒ってるの?」
「ああ。」
「何で?」
「お前が怪我をしたから。そしてそれをオレに教えなかったから」
「……ごめん。でも、それはお互い様だと思わない?君だって、その肘の怪我のこと、僕に教えてくれなかったじゃない」
「………これ、持て。」
 不二の左手から松葉杖を取り、右手に渡す。不二は戸惑いながらも、松葉杖を片手にまとめた。不安定な体を支えてやる。
「掴まれ」
「え?わっ…」
 不二の腕を自分のクビに絡ませ、背と膝に手を回すと、オレは不二を抱き上げた。
 いつもオレを押さえつけてるとは思えない華奢な体は、相変わらず、軽い。
「手塚、ちょっ…みんな見てるよ?危ないよ。降ろしてよ」
「肘も肩も、もう治った。オレが言ってるのは、過去のことじゃなくて現在のことだ」
 他人の視線を感じ、少し、自分の頬が赤くなる。まあ、この程度ならおふざけで済むだろう。
 足早に廊下を通り、階段を上る。
「だが、オレも隠していたのは悪いと思う。だから、罰として、お前のそのギブスが取れるまでは、オレがお前の松葉杖になる」
「……それはどっちの罰?」
「互いのだ」
 傷を隠し通したオレと、傷ついたことを伝えなかった不二の。
「……なんかズルいなぁ、手塚は」
 不二は苦笑すると、しっかりとオレにしがみついた。オレの肩に、頬を寄せる。
「君の想いの強さには敵わないよ」





バカップル。
不二塚で、体格差を出してみたかった。
お姫様抱っこがマイブームらしい。



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