放課後の校庭。雨の中、傘も差さず俯いている後ろ姿を見つけた。

「泣いているの?」
 隣に並び、傘を差し出して、尋ねる。
「泣いてなんかない」
 僕の声と傘から逃れるように、彼は背を向けた。
 小さく震える、意地っ張りなその背中に、苦笑する。
「だったら。一緒に帰ろう?そんなとこいたら、風邪ひいちゃうよ」
 もう一度、傘を差し出す。
「うるさいっ。俺に構うなよ。泣いてなんかないんだから!」
 振り返った彼は、真っ赤な眼で僕を睨みつけると、差し出した傘を跳ね除けた。それは僕の手から逃れ、地面へと落下した。
 空色の傘が、泥に塗れる。そして僕には、優しいとは決して言えない、まだ冷たい春色の雨。
「………あ。」
 彼の視線が傘に向かう。そこに広がっていく水溜りを見て、彼の顔が歪んだ。
「ゴメン」
 僕に視線を合わさず、呟く。
 雨は便利だ。涙を洗い流してくれる。嬉しい涙も、哀しい涙も、悔しい涙も。スベテ。
 でも…。
「雨は、気持ちまでは洗い流してくれないんだよ」
「…………ふじ?」
 僕の言葉に、彼がゆっくりと顔を上げる。その頬を伝う雫はきっと、温かい、涙。
「力になれるかなんて分かんないけど。話くらいなら、聞いてあげられるからさ」
 彼の頬に触れ、その雫を指で掬った。彼を見つめ、微笑う。
「……不二ぃ」
 呟くのと同時に思いっきり顔を歪めると、彼は僕に抱きついてきた。倒れてしまいそうになるくらいの彼の勢いに、苦笑する。
「英二……」
 名前を呼び、優しく彼を抱き返した。腕を伸ばし、頭を撫でてやる。僕はそれで、彼の涙を止めるはずだったのに。
 彼は僕を強く抱きしめると、声を上げて泣きだした。





別に、不二菊なわけでも菊不二なわけでもないです。3−6。友情。



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