「あ。金、財布に入れてくんの忘れた」
「いくら足りないの?」
 俺の呟きに答えるように、影が乗っかってきた。見上げると、優しい笑顔。
「しゅうすけ…」
「貸してあげるよ。いくら足りないの?」
 飾り気のない財布を開け、中身を見る。
「奢ってはくれないんスね」
「奢って欲しいの?」
 周助の甘い言葉に、暫く考えたあと、俺は首を横に振った。
「いい。アンタに奢ってもらったりなんかしたら、あとが怖いっスから」
「あはは。わかってるじゃない」
 借りなんて、いくらでも踏み倒せるけど。周助の場合はそうは行かない。悪徳金融みたいに、気がつくと何倍にもなって返ってくる。
 その形になるのは俺のカラダになることが多々で。別に、それはそれで嫌じゃないない気もしないでもないけど。周助の重い通りにコトが運んじゃうってのは、嫌だ。
「で?いくら足りないの?」
 言葉でいうのも恥ずかしくて。俺は掌を開いた。そこに在るのは10円玉2枚。
「あはは。大分足りないね」
 可愛いなぁ、と呟き、俺の頭を何度も撫でた。
 少しウザったいけど。悪い気はしないから、その手は掃わない。
 コインを入れ、いつものボタンを押す。
「はい。ファンタ」
「……あんがと」
 周助の手からそれを受け取る。プルトップを開け、ひとくち。
「………何、見てんスか?」
「んー。可愛いなって思ってさ」
 楽しそうに微笑う。可愛いなんて言われても、普通は嬉しくないんだろうけど。このヒトは特別。
 周助は近くのベンチに座ると、俺を手招きした。膝を叩くので、その上に座ることにする。
 周助の腕がオレの身体に回される。俺も右腕だけ、周助の首に回した。
 ファンタをひとくち。
「アンタは何も飲まないんスか?」
「うん。」
「じゃあ、何でここに?」
「リョーマの姿が見えたから」
「………じゃあ、何でお金持ってんスか?」
「そろそろリョーマの財布が淋しくなる頃かなって思ってね」
 ……厭きれた。っつーか、なんつーか。
 俺の経済事情まで知ってるアンタは一体何者なの?
「さぁねぇ」
 俺の心境を知ってか、クスクスと楽しそうに微笑う。
「ったく。アンタには負けますよ」
「リョーマがそうさせてるんだよ」
「なんスか、それ」
「それだけ僕はリョーマが好きってこと」
 クスリと微笑うと、周助はオレの頬に口付けた。





短いね。バカップル。でも、好き。



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