「不二は俺のこと、好き?」
「………好きだよ」
 放課後の教室に二人きり。僕は後ろ向きに椅子に座って、英二の補習のお手伝い。本当はいけないんだけど、今は先生もいないし、こうでもしないといつまで経っても帰れない。与えられたのは数学のプリント5枚。先週1週間分の宿題のプリントだ。
「にゃんだぁ〜、今の間は!」
 不満そうに言うと、英二は僕の頬を抓った。
「いてて…」
 頬をさする僕に、英二はわざとらしくむくれて見せた。あー。ここで機嫌を損ねたら、ますます帰るのが遅くなる…。
「ごめんごめん」
 僕は言いながら、そっぽを向いてしまった英二の頬に手を触れ、額に唇を落とした。
「僕、英二の事、好きだよ」
 言って、微笑って見せる。
「な…なんだよ、いまさら。もー遅いかんねっ。許してやんにゃい」
「………。」
「なんだよぉ…」
「別に。」
 解かりやすいな、英二は。怒ったように振舞ってるけど、その顔は真っ赤で、しかもニヤついてる。…ちょっと、不気味かも。まあ、そういう所が可愛かったりするんだけど。
「ほら、英二。いつまでもむくれてないで、さっさとプリント終わらせちゃおうよ。このままじゃ、いつまで経っても帰れないよ?」
 半ば強引に英二の手を捕ると、机の上に放り投げられていたシャーペンを握らせた。不満そうに僕を見る英二に、終わったらマック奢るから、と微笑ってやると、うん、と素直に頷いた。
 う〜ん…。解かりやすいのはいいけど。ここまで素直だったりすると、逆に不安になっちゃうな。悪い奴に引っ掛かりそうで。
 僕は俄然やる気を出した英二を見て、小さく溜息を吐いた。

「あーっ、もーヤだっ」
 あと一枚なのに…。
 英二は持っていたシャーペンを机に放り投げると、大きく伸びをした。
「英二。あと一枚だよ?」
「ヤだっ。ヤだったらヤだ!!第一、何で俺だけこんなことしなきゃなんないんだよ」
「それは英二が先週一週間、宿題をやってこなかったからでしょ?」
「でも、俺だけだよ?ぜってーおかしいって。ヤだ。もうやんにゃいっ」
 まるで駄々っ子だな。もうシャーペンは持たないぞ、とでも言うように両手をだらんとさせている英二に、僕は笑った。
「にゃに笑ってんだよぉ…」
「別に。ほら、いいの?このままだと、僕、先に帰っちゃうよ?」
「だって…」
 渋る英二に、僕は溜息を吐くと立ち上がった。
「だってじゃないの。いいの?僕が先に帰ったら、マックも無しだよ?」
 言って、バッグを取ろうとした僕の手を英二はぎゅっと掴んだ。
「ヤだ!帰んないで!」
 涙目で見つめられて、僕はどうしたものかとまた溜息を吐いた。
「……英二くんは、どっちが厭なのかなぁ?僕が帰る事?それとも、マックが無しになる事?」
「うぅ…ど、どっちも!」
 僕の手を掴んでいる英二の力が緩む。ああ。僕とマックは同じなのか。まあ、これが英二という人間なのだから、諦めるしかない。彼は、正直者なんだ、と。
「解かったよ。しょうがないな、英二は」
 僕は苦笑すると、椅子に座りなおした。
「へへ…不二、大好きっ」
 僕がちゃんと座ったのを見てから、英二は照れくさそうに鼻を掻き、微笑った。その笑顔につられるようにして、僕も微笑った。
「ったく。調子良いんだから…」





精一杯の不二菊。
精一杯の可愛さ。
多分もう二度と書かない。ん?わかんないけど(笑)
本当は続きがあるの。本当は…もっと切ない話しに…。



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