「なーんで、夜明けって来るんだろうね」
 オレの髪を撫でながら、つまらなそうに不二は呟いた。体の向きを変え、不二を見つめる。
「何故そんなことを言うんだ?」
「んー」
 ふ、と微笑うと、不二はオレに触れるだけのキスをした。額を重ね、見つめ合う。
「明日なんて来なければいいなって思っただけ」
「何故そんなことを思う?」
「手塚はそればっかりだね」
 オレの顔にかかる髪を掻き揚げ、クスリと微笑う。
「何だ?」
「『何故』って。少しは自分で考えなよ」
 不二の手が、オレの頬を包む。今度は触れるだけじゃない、口づけ。
「……なことされたら、考えられないだろう?」
 身を捩り、不二から唇を離した。ゴメン、と愉しそうに不二が呟く。オレは溜息を吐くと、仰向けになり天井を見上げた。
 明日が来なければいい?オレは今日という日が早く終われば言いといつも思う。早く明日が来ればいい、と。
 根本的な考え方が、違うのだろう。ならば、理解るはずがない。
「…どう?理解った?」
 耳元で囁かれ、オレは身を震わせた。それに気づいた不二が、愉しそうに微笑う。それに、腹が立つから…。
「不二。」
「ん?」
 体を半分だけ起こしオレの顔を覗き込んでくる不二の頬を両手で包み、触れるだけのキスをする。唇を離すと、案の定、不二が驚いた顔でオレを見ていた。ささやかなる、反撃。
「ふ。」
 暫く見詰め合ったあと、不二は笑みを溢すと、オレの隣に戻った。体の向きを変え、不二を見る。
「一文字で微笑うな」
「ゴメン、ゴメン」
 オレの言葉に、今度はクスクスと微笑う。ああ、一文字ではなく、微笑うなと言えばよかったなどと、今更、後悔。
「で。理解ったの?」
「理解るわけないだろう。お前の考えていることなど」
「……そうだね、根本的なものの考え方が違うもんね。本来なら、ねじれの位置に存在するはずだし」
「ねじれ…?」
「そう。平行なわけでもなく、決して交差することもない位置。次元が、違うんだよ」
 少しだけ、淋しそうに不二が言った。
 どうしてこう…こいつは思考を暗い方へと持っていくのだろう。
「僕がね、明日が来なければいいなって思ったのは、このまま君とずっと一緒にいたいからなんだよ」
 無理矢理という言葉が当てはまるような笑顔。オレがいるのに、そんな顔をして欲しくはない。溜息が出る。
「君は、そう思わない?」
「思わないな」
「そう……」
 オレのはっきりとした物言いに、不二は明らかに陰を落とした。
 ああ、またやってしまった、と。言葉が足りないのは、オレの直すべき所だ。
「オレは、明日が早く来ればいいと、いつも思う」
「………何で?」
「明日になれば、また、お前に会えるだろう?」
「このままでも、僕と一緒にいることには変わりないよ?」
「そうじゃない。新しいお前と、新しい想い出を作ることが出来る」
 何処からが新しい一日かなんて区切りは、きっと人それぞれだろうけれど。それでも、朝日を浴びれば、また違う自分に生まれ変われるのだと、オレはそう信じている。
「だから、オレは明日が待ち遠しいんだ」
 真っ直ぐに不二を見つめる。不二は不思議なものを見るような眼で、オレを見ていた。
 そのまま、沈黙が続いた。それを破ったのは不二。
「ふ。」
 また、一文字だけの微笑いを溢す。
「何が可笑しいんだ?」
「君って、ときどき酷く夢見る少年だよね」
「……う、」
「う?」
「五月蝿い」
 これでも、結構必死だったのに。微笑いながら言う不二に、オレは赤くなった顔を隠そうと、寝返りをうとうとした。瞬間。掴まれる、肩。触れる唇。
「嬉しいよ。考え方は違うけど、君も僕と一緒にいたいって思っててくれてるってこと」
 額を重ね、不二が優しく微笑う。オレは不二の頬をそっと包むと、触れるだけの口づけをした。また、額を合わせる。
「ずっと一緒にいれば、そのうち、考え方も同じになる」
「……そうだね」





だってバカップルが好きだって言うから。(←しつこい?)
不二くんの思考はどうしても暗くなってしまうので、手塚くんにバカップルの演出をしてもらいました(笑)
あーあ。書いてて恥ずかしかった。
ちなみに。アタシは不二くんと同じ考え方で。



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