深海のようだと思った。一片の光も届かない、絶望の色。澱んだ青。僕にはお似合いの色。
 でも、彼は。空のようだと言った。澄みきった雲ひとつない、空の色だと。綺麗な青。僕には不釣合いの色だ。

「君は僕を過大評価しているよ」
「お前は自分を過小評価しすぎている」
 僕の言葉に、間を置くことなく彼が返した。眉間に皺を寄せて彼を見上げる。彼は少し傷ついたような表情をして僕を見つめていた。
「ねぇ、何で君がそんな顔をするの?」
 彼の、冷たい手を握る。彼も、握り返してくる。
「お前が妙なことを言うからだ」
 不安げな眼。彼は僕の言っていることが理解らないというけれど、僕も彼の言っていることが理解らないときがある。とはいっても、理解できない彼の発言は決まっていて、今みたいな僕に関する発言がそれにあたる。
「妙なことって?」
「過大評価。」
「だって、事実だからね」
「どこが事実だというんだ?」
「どこって言われても、困るんだけど…」
 僕がヒトより劣っているところなんて、言葉にすると限がない。ヒトに勝っているところをあげるほうが遥かに楽だ。といっても、狡猾さとかそういった、ヒトとしてどうかと思われるようなモノばかりだけれど。
「じゃあ、君はどうして…」
 僕をそんなに特別視してくれるの?
「綺麗だと思う、お前のこと。この都会の空よりもずっと綺麗だと…」
 呟くと、彼は空を見上げた。彼の影がなくなったことで、僕の視界にもいっぱいの青が広がる。雲ひとつない、九月の空。空気が汚れているこの場所では、青はくすんでしまっているけれど。それでも、綺麗だと思う。
 でも、そんな空よりも僕のほうが綺麗だなんて。彼の真っ直ぐな眼は、僕を見るときに限って歪んでしまうらしい。
「やっぱり、君の言ってることは理解不可能だなぁ」
 僕の言葉に、眉間皺を寄せた彼の顔が戻ってくる。
「その眼鏡、曇ってるんじゃないの?」
 何故か妙に可笑しくて。僕はクスクスと微笑いながら、彼の眼鏡を手に取った。自分に掛けてみる。
「度、きついだろう?」
 僕が掛けたのが解ったのか、彼が少し意地悪く言った。確かに、頭がガンガンしてくる。
「……返す」
 呟いて起き上がると、僕は彼に眼鏡を掛けさせた。もう一度彼の膝を借りるのもちょっと変な気がしたので、そのまま彼の隣に座る。勿論、手はしっかりと繋いで。
「その眼鏡、度、合ってるの?」
「……何でそんなことを訊くんだ?」
「ん。君の眼、可笑しいと思ったから、さ」
 クスリと笑い、彼の肩にもたれる。横目で見た彼は、呆れたような顔をして深い溜息を吐いていた。
「羨ましいと思う」
「ん?」
「お前が。羨ましい」
 指を深く、深く絡ませると、彼は僕を見つめた。
「何で?」
「お前は、自由だからな。あの空よりも」
 また、彼が空を見上げる。
 確かに、自分でも自由にやってるとは思うけど。
「お前の青は、多分、自由の色なのだろう」
「…………。」
「例えお前が自分の眼の色が嫌いでも。オレは好きだ。お前の青も、不二周助自身もな」
 僕を見つめ、ハッキリとした口調で彼が言った。赤く染まった彼の頬。つられて、僕の顔も少し赤くなる。なんか、悔しい。
「何か、反論は?」
「………じゃあ、一つだけ」
 クスリと微笑い、唇を重ねる。僕はそのまま、彼を強く抱きしめた。
「好きだよ」
 耳元で囁く。
「……ああ。」
 小さく頷くと、彼は僕の背に腕を回してきた。





手塚の科白が恥ずかしいι
……違う。書いた自分が恥ずかしい(笑)
不二くんがクサイ科白を吐くのは許せるけど、手塚だとムズガユイよねι




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