ねぇ、気づいてる?
 同じところを廻ってるように見えるけど、本当は少しずつ上昇してるんだよ?

「別に、あそこまで怒らなくてもいいのに」
 喧嘩を続けながらグラウンドを走る彼ら。進歩が無いように見えるけど、実際、そうじゃない。
「規律を乱すものは許さん」
「もう、口癖だよね、それ」
 グラウンドの彼らを見つめたまま、厳しい口調で言う彼に、僕は苦笑した。その眼の奥はとても優しいのに。
「手塚。笑ってみたら?」
「何だ、急に」
「折角、優しい眼をしてるのに。眉間に皺寄せてるからさ。勿体無いと思って。そんな風だから、みんな誤解しちゃうんだよ」
 手を伸ばし、僕を見る彼の眉間の皺を伸ばす。彼は鬱陶しそうに僕の手を掃った。
「何をふざけたことを言っているんだ?」
「……自分で、気づいてないんだ」
「何のことだ?」
「ううん。いいよ。そのままで」
 彼の眉間の皺が、いっそう深くなる。それが可笑しくて、僕はクスクスと声を上げて笑った。
「全く。わけの解らん奴だ」
 溜息混じりに、彼が呟く。なに?それは僕を理解しようと努めてくれてるってこと?なんて言いたくなったけど。そんなことを言ったら、バカ、と返されるのがオチ。
「ま、僕自身、僕のことがよく解らないんだから、君にそう簡単に解ってもらっちゃ困るんだけどね」
 ふ、と彼に笑みを見せる。彼は一瞬動きを止めたあと、僕から眼をそらした。少し赤くなった顔で、グラウンドを見つめる。
「オレたちが引退したあと――」
「ん?」
「あいつらはちゃんとやって行ってくれるのだろうか?」
 まるで子供の旅立ちを見守る親みたいな、眼。そんな眼で彼らを見つめるんだったら、もうちょっと理解してあげてもいいんじゃない?
「大丈夫だよ」
 グラウンドで、喧嘩をやめて真面目に走っている彼らを見つめる。なんとなく、笑みが浮かんだ。ああ、これじゃ僕も親みたいだ。まあ、似たようなものか。
 クスクスと、声を上げて微笑う。彼が不思議そうな眼で僕を見た。でも、僕はグラウンドを見つめたまま。
「彼らは、ううん、彼らだけじゃない。僕も君も。みんな、同じところを廻ってるようだけど、少しずつ上昇してるんだよ?」
「………?」
「同じような一日でも、全然違う一日だってこと」
 僕はグラウンドから彼に視線を移すと、微笑って見せた。
「きっと、僕たちの時間は螺旋状に進んでるんだよ」
 だから、僕たちの距離も、変わらないように見えて、少しずつだけど近づいてるよ。目に見えないほどの速度だけど。





不二→手塚な感じで。まだ友情のつもり。
このテーマを見たときにSURFACEの『アイムファインセンキューアンジュー?』が流れたよ。
♪もぉメリーゴーランっ 廻すのをやめてさっ 螺旋にしないか〜い 少しでも上昇気流っ♪って。
そんなわけで『シーソー』とネタが被ってる気がしないでもないが、終わっときます。



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送