「どうしてそんなに強くなりたいの?」
「……っ」
 突然かけられた声に驚き、俺は球をスルーしてしまった。それは俺の後ろへと転がってく。
「練習熱心だね」
「……不二先輩。」
 足に当たった球を取り、俺に投げる。優しい眼で、先輩は微笑った。
「ね。どうしてそんなに強くなりたいの?」
 近くにあったベンチに座り、頬杖を付く。構わずに壁打ちを続けようと思ったけど、その視線が邪魔をして集中できない。
「強く、なっちゃ駄目なんスか?」
 溜息混じりに言う。言葉を返したことに対してか、先輩は嬉しそうに微笑った。まるで猫を呼ぶみたいに、膝を叩く。俺はわざとらしく溜息をつくと、先輩の元へと向かった。
「別に。駄目だなんて言ってないよ。理由が知りたいだけ」
 膝に座った俺を、落ちないようにきつく抱きしめる。首筋にかかる吐息が、くすぐったい。
「じゃあ先輩は、何で強くなろうって思うんスか?」
「僕は別に、強くなりたいとは思ってないよ」
 クスリと微笑う。
「嘘吐き」
「ん?」
「じゃあ何で、俺よりも上にいるんスか?」
 口を尖らせ、先輩を睨む。先輩は背に回ってた手を俺の頬に移動させると、触れるだけのキスをした。
「追うよりも追われるほうが、スリル感じるよね」
 意地の悪い笑み。それだけの理由の為に、俺はこのヒトに勝てない?
「そんなんじゃ、納得行かないっスよ」
「ま、ヒトそれぞれってことだね。うん。今度はリョーマが答える番だよ」
 愉しそうに言う。これ以上の追及は無理らしい。また、溜息。
「負けるのが嫌なだけっすよ。俺は、もっと上に行きたい」
「僕よりも?」
「そう。アンタよりも」
「イチバンになりたいってこと?」
「平たく言えば、そんな感じっスね」
 一番って響きが、何となく幼稚な気がして。俺は適当に頷いた。先輩から目を逸らす。
「俺、テニスくらいでしかそういうの、なれないっスから」
 呟く俺に、先輩はクスクスと微笑った。
「何、微笑ってんすか?」
「そうだよね。スポーツには国境ないしね」
「………うるさいっスよ」
 この間のことを言ってるんだろう。この間、オレは漢字のテストで、赤点って言うのをとった。
 アメリカに居たとき、家での会話は殆んど日本語だったから、こっちに来ても不自由はしてないけど。文字は別。漢字は、未だに読めないものが多い。だからときどき不二先輩に教えてもらってるんだけど。
 ……この間のテストを見せたのが失敗だったな。
 溜息を吐く。このヒトの前で少しでも弱みを見せちゃうと、すぐ利用される。初め、その笑顔を見たときは天使みたいだとか思ったけど。たぶん、脳味噌は悪魔と同じ構造。
「でもね、リョーマ」
 俺の頬にあった手を顎に滑らせ、無理矢理に自分の方を向かせると、先輩はまたキスをしてきた。今度は、少し長めのやつ。
「何も、テニスだけじゃないんだよ。君がイチバンになれるのは」
 顎を掴んでた手を放し、オレの目の前で人差し指をピンと立ててみせる。
「……なんスか?」
「君は僕のイチバンってこと。君に敵う相手なんて、誰もいないんだからね」
 オレの唇にその人差し指を当て、微笑った。また、溜息。
「………先輩のそのくさい台詞に敵う相手も、多分いないっスね」
 悪態を吐く。先輩は、非道い、と言いながらも微笑った。俺の顔は、不覚にも真っ赤になっていた。





バカップル。
違います。くさい台詞を吐いているのはアタシ。基本的にキザだといわれたι
あー。不二の片膝に座るリョーマ、可愛いv




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