「燃えるぜ、バーニーング!」
「あーっ、不二、危にゃいっ!」
「え?」
 英二の声に振り返ったときにはもう遅く。僕の唇はガタイの良い男に奪われてしまった。

「愛してるぜ、不二子ちゃん」
 捨て台詞のような言葉を吐くと、彼はそのまま逃げるようにどこかへ走り去って行った。
「……タカさん」
 僕は、ただ呆然と、その背中を見送る。
「…不二……大丈夫?」
 その視界を遮るようにして顔を覗かせたのは、僕に注意を促してくれた英二。
「んー。大丈夫って言えば大丈夫だけど。大丈夫じゃないって言ったら大丈夫じゃないかな」
 唇を拭いながら、苦笑してみせる。英二が僕の言葉で頭にハテナを浮かべるから。僕は周りを見渡してみせた。同じように、英二も僕を中心に視線だけでコートを1周。
「あ。にゃーるほど…」
 ぽん、と手を叩く英二。
「でしょ?」
 クスリと微笑った僕には、コート中の視線が集まっていた。


「不二。ごめんっ」
 僕より大きなヒトが、両手を合わせ、僕よりも小さくなっている。その態勢が可笑しくて、僕は声を上げて微笑った。
「いいよ。怒ってないから」
 彼の肩を叩き、顔を上げるように促す。
「本当かい?」
「うん。怒ってない。だから、とりあえず座ろ?」
 僕は彼の手を引くと、すぐ後ろにあるベンチに座った。
 彼のバーニングは厄介なもので。まるでお酒に酔ったように大胆な性格に変わるくせに、飲みすぎたあとのように記憶が飛んではくれない。しっかりと、その頭の中に残ってるんだ。まあ、酒に酔ったヒトはみんながみんな、記憶が飛んじゃうわけじゃないんだけど。
「本当にごめんな」
 規律を乱したとして、手塚にグラウンド30周させられたばかりの彼は、男くさい匂いがする。だったら、もうちょっとしっかりして欲しいものだけど。彼は優しいから。時には酷く情けなく見えてしまう。それがちょっと難点だ。
「ふ、不二?やっぱり怒ってるんじゃない?」
 黙ったままの僕の顔を覗き込む。彼の、優しくも情けない顔。僕としてはバーニングしてる状態もしてない状態も、優しいことに変わりはないから、好きなんだけど。
 やっぱり、積極性って大事。
「怒ってないよ」
 笑顔を見せると、僕は彼の頬を優しく包んだ。僕の行動の意味が理解らない為か、彼の動きが止まる。
「不二…?」
「バニっててもさ、タカさんはタカさんなんだよね?」
「……う、うん」
「じゃあ、タカさんのあの行動と言葉は、タカさんのものに変わりないんだよね?」
「………え?」
 戸惑い気味の彼に、クスリと微笑うと、僕はキスをした。あの時みたいに一瞬のものじゃなく、もうちょっと長めの口づけ。
「……ふ、じ?」
 唇を離すと、目を丸くしてる彼の顔が飛び込んできて。思わず、声を出して笑ってしまった。
「嬉しかったよ。タカさんからのキス。あんな行き成りで、しかも公衆の面前だったから。ちょっと吃驚しちゃったけどね」
「……え…えっと…」
 僕を見つめる彼の顔が、みるみる赤くなる。
「ね。僕は好きなんだ。タカさんのこと。……タカさんは?」
「えーっと…その…」
 真っ赤になった顔で、カラダに似合わずもじもじしている。可愛いから、そういうところも好きなんだけど。決める所はやっぱり、バッチリ決めて欲しかったりもする。
「焦れったいなぁ」
 だって、僕にキスした時点で、タカさんの気持ちは僕に届いてるんだよ?
「なんなら、もう一回ラケット握る?」
 足元に落ちていた古いラケットを拾うと、彼の前に差し出した。彼が慌てて首を横に振る。
「いいよ、もう。ラケットは」
「じゃあ、教えて?タカさんの気持ち」
「う、うん」
 頷いて、大きく深呼吸をすると、彼は僕の手を強く握った。その真剣な面持ちに、何となく僕まで緊張してきちゃう。
「おれも、不二のこと――」





♪あ〜らすぅぃ〜あ〜らすぅぃ〜ふぉ〜どぅり〜む♪(懐い)
バニってるタカさんを書いたのは初めてだ。
そして告白のシーンを書くのも初めてだ。




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