「………あん言葉、撤回するわ」
 ソファ越しに後ろから僕を抱きしめ、耳元で囁く。僕は回された腕に唇を落とすと、クスリと笑った。それを合図に、彼が、体重を掛けてくる。
「重いんだけど」
「……雰囲気、壊さんとってくれる?」
「ん?何のこと?」
「……別に」
 不貞腐れたように言うと、彼は僕から体を離そうとした。その手を、強く握る。
「冗談だよ」
 思い切りその手を引き寄せると、近づいた彼の顎を掴み、唇を重ねた。
「だから、こっちおいで?」
 微笑いかけ、隣の空白を手で叩く。
「……しゃ、しゃーないな」
 赤くなった顔を隠すように眼鏡を直すと、彼は僕の隣に座った。首に腕が回され、僕の体は彼を組み敷くような形で倒された。口付けを交わす。
「あ。そーえば」
「……なんや?」
「撤回するって、何のこと?」
「……雰囲気、壊さんとってくれる?」
 溜息混じりに言う彼に、クスリと微笑うと、僕は体を起こした。乱れた服を整える。
「そんなん、直さんでええやん。どうせすぐ脱ぐんやし」
「そうなの?」
「……違うんか?」
「さぁね」
「……自分、ものごっつ意地悪やんな」
「それだけが取り柄だからね」
 クスクスと微笑う僕に、彼は溜息を吐くと体を寄せてきた。僕の左手を、彼の右手が弄ぶ。
「『天才』っちゅーのは取り柄なんちゃうん?」
「…何?」
「俺が取り消すっちゅーたんは、そん事や」
 ……始めて彼を見たときは、もうちょっと論理的なヒトかと思ったけど。実際付き合ってみたら、そうでもないらしいことが判った。
 とにかく、彼が急に持ち出す会話には、言葉が足りなすぎる。まあ、突然話し出すのは僕も同じだけど。
「天才が、どうかしたの?」
「せやから、取り消すって」
「………ああ」
 ようやく、僕は彼の言葉を理解した。
 あれは、氷帝戦の直前。会場に向かう途中に偶然に会ったときに言われた。
 『天才はひとりだけでいい。誰がほんまの天才かは、試合が終われば判る』
 別に僕は天才なんて称号に拘ってなかったから、その言葉は大して気にも留めなかったんだけど。
「別に、取り消さなくてもいいけど?」
「取り消させて欲しいんや」
「何で?」
「井の中の蛙っちゅーか、なんちゅーか。俺はなんも知らんかったんやな、って。即興で作ったペアに俺らは負け、一方のお前は氷帝No.2のジローに勝ったんやからな」
「そんなこと」
 妙なことを気にするんだな、って思った。別に、僕は彼と直接当たって勝ったわけでもないし、別に天才なんて何人いてもいい。
「阿呆な話、テニスだけだっちゅーのがあったからな。悔しかったで。ああも実力差を見せ付けられて。同じ天才の称号を持つもんとしては」
「……へぇ。結構真面目に考えてたんだね」
 後輩の面倒も見ず、毎日のように僕を部屋へ招いている今とは、大違いだ。
「まあ、もう昔のことや」
 まじまじと彼を見る僕の視線に気づいたのか、彼は溜息混じりに呟いた。
「過去なんだ」
「そうや。理由知りたいか?」
 意味深に、彼が笑う。僕は静かに首を横に振った。彼がまた、溜息を吐く。
「連れへんやっちゃなぁ」
「ま、何となく判るしね」
 口元に笑みを浮かべ、口付けを交わす。そのままで、僕は彼の体をゆっくりと倒した。
「こういうことでしょ?」
 クスリと微笑う。彼は一瞬にして顔を真っ赤にすると、僕から逃れるように顔を背けた。
「……ほんま、意地悪いな、自分」
「でも。そういうところも、好きなんでしょ?」
「うっさいわ、ボケ」





似非関西弁に、赤面ι
ゴメンナサイ。アタシは茨城人なので、関西弁はワカリマセン。
あれだね。跡部と不二が幼馴染な設定で、不二を取り合って跡部vs忍足っていうのも良いネ(攻めアイドル化計画)




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