突然ボクの目の前に現れたその人は、ボクと自分の小指が『運命の赤い糸』で結ばれていると言ったのです。



「だから、そんなもの無いって言ってるでしょう?いい加減、帰ってくださいよ。第一、ここは学院関係者以外は立ち入り禁止ですよ」
「はいはいはい。怒らない、怒らない。折角の綺麗な顔が台無しだよ」
 彼は愉しそうに笑うと、ボクの唇にピンと立てた人差し指を押し当ててきた。
「それに、僕は関係者だよ。なんたって、君の恋人なんだから」
「だ、誰が恋人ですかっ!」
「だってほら見てよ」
 声を荒げるボクとは反対に落ち着いた声で言うと、彼は左手の小指をピンと立てた。僕の左手も取り、無理矢理小指を立てる。
「……何の、真似です?」
「見えない?この赤い糸が」
「見えるわけ無いじゃないですか!もうっ。ふざけてないで早く帰ってくださいよ」
 彼の手を振り解き、触れられた部分を何度もタオルで拭う。それを見た彼は、わざとらしいくらいの哀しい顔をした。
「まあ、見えないんじゃ、信じてくれなくても仕方がないよね」
 溜息を吐き、ボクのソファに深く座ると、ハーブティーを一気に飲み干した。小指の周りで人差し指をクルクルやってるその仕草は、恐らく糸を指に巻きつけるというマイムなのでしょう。が、そんなことをやっても、見えないものは見えないし、信じられないものは信じられるわけがありません。
 第一、ボクを憎んでいるはずの彼との間にそんなものがあるはずは――。
「だから言ってるじゃない。僕は観月が好きなんだって」
 ボクのココロを読んだのか、彼は言い切ると微笑った。
「ぼ、ボクは貴方のこと、キライです」
「うん。それは君自身、自分の気持ちに気づいてないからだよ。君も僕のことが好きなんだ。だから、こうして赤い糸で結ばれてる」
 愉しそうに言うと、彼は小指を出し、ひらひらとボクの目の前で振って見せた。
 これ以上、何を言っても無駄ですね。
 溜息を吐き、ソファに深く座りなおす。そんなボクを見て、彼は余裕とも取れる笑みを浮かべた。
「どうして、見えないんだろうね…」
「存在してないからでしょう?」
「まあ、莫迦には見えない糸だから、仕方がないといえば仕方がないけど…」
 カチン、ときた。彼は今、何と言った?バカ?このボクがバカだって?
「観月、莫迦だもんね」
「誰がバカですか!」
「だって、見えないんでしょう?」
「っボクにだってそれくらい見え――」
 待て。ここで見えるといってしまったら、裸の王様状態。ボクと彼との縁を認めたことになってしまいます。それこそ、バカというもの。ふふふ。不二クン。その手には乗りませんよ。
「"見え"?」
「……見えないですよ。存在しないもの、どうやって見えるって言うんですか。100歩譲って、それがバカには見えない糸だとしましょう。それなら、ボクに見えないのは可笑しいです。なんてったってボクは――」
「莫迦だから仕方がないよねぇ」
「だから、バカではないですってば」
「あーあ。ムキになっちゃって。可愛いんだから」
 声を荒立てるボクに、彼は声を上げて笑った。このヒトをバカにした態度。どこまでもムカつく男です。
「じゃあ、さ。他のヒトに訊いてみるって言うのはどう?」
「は?」
「他のヒトにもこの糸が見えるかどうか訊いてみようよ。それで見えるってなれば、君も納得するでしょ?」
「え、ええ。まぁ」
 それはそうですけど。この男の自信、何か裏がありそうな気が…。
「大丈夫。買収とかしてないから。だったら、君が訪ねればいい。ね?」
「……いいでしょう」



今回は、不二→観月です。
次はルドルフレギュラー総出演。しかし、会話だけ(笑)

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「ちょっと、赤澤クン」
「何だ?観月」
「これ、見えますか?」
「?何だ?」
「だから、この小指に何か見えませんか?」
「いいや、別に。それがどうかしたのか?」
「いえ。見えないのならいいです」

「不二クン」
「何?」
「やっぱり、赤い糸なんて嘘じゃないですか」
「…莫迦だなぁ、観月。赤澤は君の上を行く莫迦だよ?見えるはずないじゃない」
「………それも、そうですけど」
「じゃ、次ぎ行ってみよう!」


「木更津クン。ちょうどいいところにいました。これ、見えます?」
「えーっと……」
「見えませんよね?」
「………赤い、糸?が見えるけど」
「―――え?」

「ほら、見えるってさ」
「まさか、買収したんじゃないでしょうね?」
「買収されないと思ったから、彼を選んだんでしょ?まだ信じられないんじゃ、他のヒトにも訊いてみれば?」
「……はぁ」


「あ。裕太」
「なんだよ、何で兄貴がここにいんだよ」
「いいじゃない。それより、さ。僕と観月の間に、何が見える?」
「何がって、何もねぇじゃねーか」
「ホント?よく見て。何が見える?」
「………あ、赤い糸?」
「そ。運命のね。ほら、観月。見えるってさ」
「…裕太くんは信用できませんよ。何て言ったって、あなたの身内なんですから。それに、彼は利口とも言い難いですし…」
「んー?観月、いま何て言った?」
「…あ。金田クン、ちょっと」
「はい、なんでしょう」
「ボクと彼の間に、何か見えます?」
「………運命の赤い糸ですか?」
「流石、金田君だ。うちの黄金ペアに一矢報いただけあるね」
「……次行きますよ、不二クン」


「ちょっと、そこのアヒル。こっちへきなさい」
「観月?アヒルって誰のことだーね」
「君のことだよ。だーね君」
「あーっ。不二周助だーね。何で君がここにいるだーね」
「んー。ちょっと、ね」
「そんなことはどうでもいいんです。柳沢くん、ボクの小指に何か見えます?」
「………そんなの、赤い糸に決まってるだーね。その先は不二周助に繋がってるだーね。なぁ、ノムタク?」
「ぼくには何も見えないけど…」
「野村君は莫迦だからしょうがないんじゃない?訊くところによると、裕太にいつも殴られてるみたいだし」
「……うーん」



野村くんはノムタクでいいんですか?
次は急展開。二人の距離が一気に縮まります。
あと、真相。

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「ね。これで信じてくれるでしょ?」
 ボクの部屋。彼は入れた手のハーブティーを美味しそうに啜ると、笑みを作った。
 あの後、何人かの生徒に聞いては見たものの、ボクがバカだと思うヒト以外はほぼ全員がボクと彼の間に『運命の赤い糸』が見えると答えた。これは、信じざるを得ないのでしょうか。
「ですが。ボクは今現在、貴方のことを好きではありません。というより、キライです」
「だから、これから好きになっていくんだよ。これは運命なんだ。諦めて僕のモノになっちゃいなよ」
 相変わらず、自分勝手な言い草です。そういうところが、嫌なんですよ。ボクは僕の思い通りにならないことが嫌いなんです。ましてや、誰かのモノになるなんて、まっぴらごめんです。
「誰が。死んでもお断りです」
 言い切って、彼から視線を逸らす。もううんざりだ。こうして相手にしなければ、そのうち帰ってくれるでしょう。
「………。」
「………。」
 長い沈黙。と、カップの置く音が聞こえた。帰る、ということなのでしょうか。
「…………観月。」
 かと思って気を緩めた途端、彼の僕を呼ぶ声が飛んできて。その声の真剣さに驚いたボクは、思わず彼を見てしまった。ボクを見つめていた彼の真剣な眼と、視線がぶつかる。
 何なんでしょう。この急展開は…。
「観月」
 もう一度、名前を呼ばれた。と思ったら、ボクのすぐ眼の前に彼の顔があった。いつの間にか、肩を捉まれ引き寄せられていたらしい。視界がぼやける手前ギリギリのところに、彼の真剣な眼差しがある。
「な、なんです?」
 近すぎる距離のせいなのか、滅多に見ない真剣な彼の眼のせいなのか、それとも全く別なもののせいなのか。よくは解からないけれど、何故か胸の鼓動は五月蝿いくらいに響いて。ボクは動くどころか、彼から眼を逸らすことも出来なくなってしまっていた。
「好きだよ。何も信じられなくても、これだけは信じて欲しい」
「ぼ、ボクは貴方のことがきらっ……」
 言い終わる前に、ボクの視界は真っ暗になった。唇には柔らかい感触と温もり。
「ね。」
 次に視界が開けたときには、ボクの眼の前で優しく微笑う彼がいて。何故かボクはその眼を見つめることが出来ずに、俯いてしまった。
 何なんでしょう。この胸の高鳴り。このもやもやとした気持ちは。これは、やはり。もしかして、ボクは彼のことを…?
「顔赤くしちゃって。可愛いんだから。拒まなかったってことは、少しは望みがあるのかな?」
 嬉しそうに彼は言った。その口調は、いつも通りのからかいのそれで。
「それは貴方があまりにも唐突だっ…」
 ボクは反論をしようと顔を上げた。それが、いけなかったらしい。口調は軽いものだったのにも関わらず、ボクを見つめる彼の眼は真剣なままで。ボクは不覚にも、再びその蒼い眼に捉まってしまった。
「じゃあ。……キスしてもいい?」
 彼の手が、ゆっくりと上がってきて、ボクの顎を掴む。ずっと、触れられるのが嫌だったのだけれど。いまは何故かそんな気は起きてくれなくて。
「いい?」
「……好きに、すればいいじゃないですか。ボクが拒んだって、無駄なんですから。ボクと貴方が結ばれることは、どうせ、運命とやらで決められているのでしょう?」
「うん。そうだね」






《真相》
「観月も可哀相だーね。あんな奴に好かれるなんて」
「クスクス。そうだよね。でも、まんざらじゃないみたいだったよ」
「ってか、あんな顔で睨まれたら、何でもいいから"見える"って言わざるを得ないだーね。それに気づかないノムタクはバカだーね」
「多分、後で闇討ちにでも遭うんじゃないのかな、ノムタクは。クスクス。ご愁傷様」
「……皆、すまん。兄貴の所為で…」



本当は漫画で書きたかったネタ。しかし画力が無いので、文章で。
ってか、文章力もないから…駄目ぢゃんι

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