「手塚ぁ」
 間の抜けた声と共に、オレの背中に体重が掛かった。回された腕が、きつく抱きしめてくる。
「……不二。重い。暑い。苦しい」
「三重苦だね」
「バカ。いいから離れろ。書けないだろうが」
 シャツのボタンを外そうとする不二の手を、シャーペンでつつく。
「痛いよ。暴力反対」
 耳元で、息を吹きかけるようにして言うと、不二はオレの手からシャーペンを取り上げた。
「お前のしていることは暴力じゃないのか?」
「暴力だと思うの?」
「強引すぎる」
「どこら辺が?」
 クスリと微笑うと、不二はますますオレに体重をかけてきた。けれど、先程のようにオレを強く抱きしめたりシャツのボタンを外そうとしたりはしてこなかった。ただ、オレの背に圧し掛かっているだけ。
「嫌なら、突き飛ばしてもいいんだよ?」
 クスクスと、耳元で微笑う。オレがそれを出来ないことを知ってて。
「なーんてね。もういいや。僕もなんだか暑くなってきたよ」
 溜息混じりに言う。不二はオレから体を離すと、ベッドに体を投げた。皺ひとつなかったシーツが、瞬く間にぐしゃぐしゃだ。
「おい、ここはオレの部屋だぞ」
「知ってるよ。あー、手塚の匂いがする」
 愉しむような口調で言うと、不二はオレの布団に顔を押し付けた。本気で匂いを嗅いでいるらしい。
「やめろ、変態」
「あはは。だって、手塚がなーんにもやらしてくれないんだもん。気分だけでも味わわせてよ」
 言って、体を布団で包む。
「お前、暑いんじゃなかったのか?」
「暑いけど、それとこれとは別……じゃないね。暑いよ、やっぱり」
 苦笑すると、不二は布団を体から剥がした。自由になれた、とでも言うように大きく伸びをする。
「バカ」
「うーっ、暇だぁ」
「だったら勉強でもしたらどうだ?と言うか、テスト勉強をしに家に来たんじゃないのか?」
「一応はそのつもりだったんだけどさぁ。何か暑くって、やってらんねーって感じ?」
 語尾を上げて言う。その言い方が可笑しかったのか、不二は声を上げて笑った。オレのベッドに横になったままで。
「ねー、手塚。勉強なんてほっといて、こっち来てよ」
「駄目だ」
「なーんで?いいじゃん。どうせまた君が一位だよ。勉強でもテニスでも、僕は君に勝てないんだから」
 大して悔しそうじゃない口調で言うと、不二は微笑った。
 気楽なもんだ。こっちはそれなりの努力とやらをしないと、その成績を修められないというのに。
 それに。
「オレだって、どうしてもお前に勝てないものはあるさ」
「んー?何?」
「さぁな」
「意地悪。教えてくれたっていいじゃない」
「断る」
「ようし、どうしても教えてくれないって言うのならっ」
 不二は勢いよく立ち上がると、オレを強く抱きしめてきた。強引に唇が重ねられる。
「このまま、襲っちゃうよ?」
 額を合わせての不敵な笑み。オレはそのままそっくり、それを返してやった。尤も、上手く微笑えていたかは保証できないが。
「別に、構わんぞ」
「え?」
 予想もしなかったであろう言葉に固まっている不二にの唇に、オレは自分のそれを重ねた。





ナンダカンダ言っても、不二には勝てない手塚。
でもこれは手塚がそうさせてるわけだから…ドローか?
だらだらしてる手塚とか見てみたよね(笑)


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