不要なランク付け。お陰でこっちは大迷惑だ。例え僕が気にしてないとしても。例え彼が気にしてないとしても。周りが気にするから…。

「また、見られてたね」
 試合の後、同じベンチに座ると僕は彼に微笑いかけた。彼にタオルとドリンクを渡す。
「そうか?」
「うん。見られてた」
「まあ、試合だからな。仕方がないだろう」
 仕方がない、か。まあ、試合のときだけなら別にいいんだけどね。
「でも、普段の練習のときでも見られてるの、知ってる?」
「………そうなのか?」
「うん。しかも、僕と手塚が組むときに限って、ね」
 僕の言葉に、彼は眼を瞑ると眉間の皺を少しだけ深くした。練習風景を思い出してるんだろうけど。でも、多分、無理。練習に集中してる手塚は、きっと周りのことなんか見えてないだろうから。
「……そう、か?」
 ほら、思った通り。
「そうなの。今だって皆、僕たちがどんな話をしているのか気になって仕方がないと思うよ」
 言って、眼だけで辺りを見回す。何人かと眼が合い、そいつらは慌てて眼を逸らした。それより大分遅れて、彼が体ごと辺りを見回す。でも、あからさまに僕たちを気にかけている奴らはもういない。
「そうは思えないが」
「そうなんだよ」
「……だが、例えそうだとしても。…何故なんだ?」
 天然な彼は、理由が解からないらしい。僕は小さく溜息を吐くと、宙を仰いだ。
「やっぱ、気になるでしょ。3年が引退してからまだ1回しかランキング戦をしてないとは言え、No.1とNo.2が試合をしたり話をしたりしてたら」
「ナンバー…ワン?」
「そ。君と僕の事。知らないの?」
「特に…気には止めていなかったから」
「そう。僕も、余り気にしてはいなかったんだけどね。周りがさ、五月蝿くて。特に英二なんかは。ほら、ゴシップ好きじゃない?僕と君との間にいざこざが起こるのを期待してるみたい」
 言いながら、僕は英二を指差した。眼が合った英二は、わざとらしく逸らすことも出来ず、そのまま固まってしまったようだった。
「ね」
「……そのようだな」
 やっとのことで。彼は理解してくれたらしい。僕は手を開くと、英二に小さく手を振った。その行動にホッとしたのか、英二は強張った顔を緩ませると、大石の元へと走って行った。
「さて、と。これからどうしよっか」
 大きく伸びをし、彼を見る。彼はハテナを浮かべたような顔で僕を見つめ返した。
「だから、さ。一緒にいない方が良いのかなって。手塚って、意外に目立つこと嫌いでしょう?」
 その存在だけで、否が応にも目立ってしまうのに。まあ、その事実に本人は気づいてないみたいだけど。
「お前は、オレと一緒にいるのが嫌なのか?」
「え?」
 彼の言葉に、今度は反対に僕がハテナを浮かべる。そんな僕を見て、彼は、やれやれ、といった感じで溜息を吐いた。立ち上がり、僕に手を差し出す。
「……手塚?」
「柔軟、いつものように手伝ってくれるんだろう?それとも、オレと一緒にいるのは嫌か?」
「………ううん」
 予想もしなかった彼の言動に、反応が遅れたけど。僕は慌てて首を横に振ると、彼の手を取り、立ち上がった。





短い。偶には手塚のほうから手を差し伸べてもいいよね。(あ。偶にぢゃないって?)



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