「大丈夫か?」
 いつものように、平気で手を差し伸べてくるから。
 僕も、平気な顔してその手をとった。
 伝わってくる、ひんやりとした温もり。
 立ち上がり、彼を見つめる。
「ありがと」
 笑顔を見せたはずなのに、彼は少し困った表情をした。
「……ああ」
 顔を背けながら、呟く。その声も、彼の手も。こんなにも冷たいのに。
 胸の奥から沸き起こる感情は、驚くほど、温かい。
 本当は、もっとずっとこうしていたい。
 けれど、それが出来ないこと、解かってるから。
 僕は滑らせるようにして、彼から手を離した。
 僕の温もりと想いを、その手に残すように…。



Said-T

あとがき














































「ありがと」
 言葉と共にオレに渡されたのは、柔らかい笑み。
 それは普段から目にしているもので、今までは大して気にならなかったのだが。
 何故かその時は、どう返したら良いのか解からなくなってしまい。
「……ああ」
 顔を背けながら、自分でも驚くほどの冷たい返事をしてしまった。
 不二の手が、オレの手から離れる。
 離れたはずなのに、触れ合っていた箇所にはいつまでも温もりが残っていて。
 オレはそれを逃がさないようにと、左手を強く握り締めた。



Side-F

あとがき















































本当は漫画にしたかったのですが。
『手』が中心になっているので、無理でした。(元々絵描きじゃない上に、手は苦手ι)
そんなわけで。最後のお題だというのに、短くてスミマセン。
二人の空気が伝わればいいかな、と。


Said-T

Side-F



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