「大丈夫か?」 いつものように、平気で手を差し伸べてくるから。 僕も、平気な顔してその手をとった。 伝わってくる、ひんやりとした温もり。 立ち上がり、彼を見つめる。 「ありがと」 笑顔を見せたはずなのに、彼は少し困った表情をした。 「……ああ」 顔を背けながら、呟く。その声も、彼の手も。こんなにも冷たいのに。 胸の奥から沸き起こる感情は、驚くほど、温かい。 本当は、もっとずっとこうしていたい。 けれど、それが出来ないこと、解かってるから。 僕は滑らせるようにして、彼から手を離した。 僕の温もりと想いを、その手に残すように…。
「ありがと」 言葉と共にオレに渡されたのは、柔らかい笑み。 それは普段から目にしているもので、今までは大して気にならなかったのだが。 何故かその時は、どう返したら良いのか解からなくなってしまい。 「……ああ」 顔を背けながら、自分でも驚くほどの冷たい返事をしてしまった。 不二の手が、オレの手から離れる。 離れたはずなのに、触れ合っていた箇所にはいつまでも温もりが残っていて。 オレはそれを逃がさないようにと、左手を強く握り締めた。