21.偉大なる母(不二塚)
「周助くん、だったわよね?」
「――え?」
「名前。違ったかしら?」
「いえ。はい。合ってます。あ。お邪魔してます」
「こちらこそ。国光といつも遊んでくれてありがとう。あの子ね、今まで友達ですら家に連れてきたことなんてなかったのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。だから嬉しくて。……ねぇ。周助くんはあの子の何処が好きなの?」
「えっ?」
「あら。違った?もしかして国光に嫌々付き合ってくれてるの?」
「まさか、そんな。……そう、ですね。尊敬できるところ、かな。お互いに尊敬し合えるって、最高の友情ですよね?」
「あら。友情?愛情じゃなくて?」
「へっ?」
「違ったらごめんなさい。周助くんは国光の恋人なんじゃないの?」
「えっ、あっ、そのっ、あのっ……」
「やっぱり。いいのよ、慌てなくて。言ったでしょう?嬉しいって」
「……怒って、ないんですか?」
「どうして怒らなきゃいけないの?あの子のことを大切に想ってくれてるのに」
「気持ち悪い、とか」
「分からないことを想像で気持ち悪いなんて言えないわ」
「……そういう、ものなんですか?」
「だってこの機を逃したら、今度はいつあの子を大切に想ってくれる人が現れるか分からないから。出来ればこの先も、ずっとあの子の恋人でいて欲しいとさえ思うわ」
「手塚は……いえ、国光くんはモテますよ。ファンの女の子も沢山いますし。だとしたら、女の子の方が……」
「それと。あの子が誰かを大切に想うなんてことも。この機を逃したら、いつになるのか」
「そんなこと。彼はいつも、部員を大切に想ってますよ」
「あの子は誰に対しても優しいのよ。でも、特別になったのはあなただけ。多分、この先もずっと」
「……どうして」
「あの子のことは見ていれば分かるわ。だって私、母親ですもの」
「…………」
「不二、すまない。ちょっと買い物を頼まれ――」
「手塚!」
「おかえりなさい」
「……おかあ、さん?不二と何を……」
「ちょっとした世間話。それより国光」
「は、はい」
「名前、ちゃんと呼んであげないと駄目よ」
「はい。……え?」
「周助くん。あとでお茶持って行くから。ほら、国光」
「え、あ、はい。ふ……周助。行くぞ」
「……うん」


「お前、母と一体何を話してたんだ?」
「僕が君の恋人だってこと」
「なっ……」
「これからもずっと恋人でいてって言われた」
「なんだって!?」
「言っとくけど、僕は友達だって最初言ったんだよ?だけど、知ってた」
「……そんな」
「でも、これで親公認だね」
「…………」
「それよりも、さ。ねぇ。く、に、み、つ」
「その呼び方は、やめろ」
「恥ずかしい?」
「慣れていないだけだ」
「すぐに慣れるよ。……って。そうじゃなくて」
「なんだ?」
「君、お母さんに僕の名前教えた?」
「いいや。そんな必要もないだろ?」
「…………」
「…………」
「ねぇ。君のお母さんって。……なんか、凄いね」
「……そう、らしいな」
(2009/9/8)
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