37.巡回パトロール(はるみち)
「……過保護ね」
「何が?」
「貴女よ。あの子に対して、過保護だわ。それはほたるに対しても言えることだけれど」
「過保護なんて。そんなことないだろ」
「あるわ。こうやって毎日あの子を見張って」
「見張るなんて。パトロールと言って欲しいな。狙われてるのは、彼女なんだから」
「それはそうだけど。でもだからって何時間もこうしていることはないと思うの。パトロールなんでしょう?」
「退屈?」
「私は……貴女といれば退屈なんてことはないけれど」
「嘘はいけないな」
「嘘じゃないわ」
「じゃあ何でそんなに不満そうなんだい?」
「だって……」
「なぁ、みちる。今、僕たちは二人きりなんだぜ?」
「知ってるわ。車という密室で、二人っきり」
「それでも、退屈?」
「ねぇ、はるか。……分かって訊いているんでしょう?」
「何を?」
「んもう」
「……じゃあ、パトロールついでにドライブでもするかい?」
「はるかっ」
「だってみちる、残念ながら僕の車にはスモークが張ってない。それでもいいの?」
「それは……」
「僕は、出来ることならそんなみちるの姿は誰にも見せたくないと思うけど?」
「私は……」
「ごめん。そんな表情(かお)させるつもりじゃなかったんだ。ちょっと、みちるに素直になってもらいたくてさ」
「あら。私はいつも自分に正直なつもりよ。貴女と同じで」
「そう?じゃあそれを受け取る僕の方がひねくれてるのかな?どうも、僕を試してるようにしか思えないんだけど」
「……試す?」
「君のしたがってることを、汲み取れるかどうかって」
「私のしたがってること?」
「そう。例えば……」
「……っん」
「こういうこと、とか」
「……はるか。ねぇ、はるかちょっと……」
「何?」
「やっぱりここじゃ」
「君の正直な気持ちを読み取ったつもりなんだけど。間違ってたかな?」
「間違っては、いない、けど」
「……とりあえず、走ろうか」
「はるか?」
「パトロールは、一所にいたら意味がないからね。……ここじゃ、もしかしたらあの子たちに見つかっちゃうかもしれないし。少しの間だけ、待ってもらえるかな?」
「……ええ。構わなくってよ」
(2009/9/8)
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