39.掃いて捨てるほど(はるみち)
「ただいまっと」
「お帰りなさい」
「わ。なんだ。みちる。いたの?」
「あら。いちゃ悪かったかしら?」
「そ、んなわけないだろ。みちるが来たいと思ったときに来れるようにって合鍵を渡したんだから。……ただ、驚いただけだよ。どうしたんだ?灯りもつけないで」
「もし外から部屋の灯りが見えて私がいるかもって思ったら、お連れの人を帰してしまうかもしれないでしょう?」
「僕を試したのか?」
「今日の所は、見逃してあげるわ」
「おい、みちる」
「嬉しいでしょう?貴女のフリーク、ここ最近で随分と増えたから」
「あのなぁ、みちる……。君は僕をどんな人間だと思ってるんだよ」
「そういう人間よ。貴女の淋しさを紛らわしてくれる人なんて、選り取り見取りだもの」
「……大勢の人間に囲まれているからって、孤独じゃないとは限らない」
「はるか?」
「寧ろ、そういう時の方が孤独を感じたりするんだよ。ああ、僕はこの人たちとは違うんだってね」
「……はるか」
「でもね、みちる。君がいるから、僕は孤独を感じずにいられるんだ。離れていても、君の存在を感じてるから。僕の言ってること、分かる?」
「……分からないわ」
「さっきまで一緒だった人は、雑誌記者。確かに僕のファンではあるみたいだけど、ね。インタビューを受けてたんだ。今度、表紙を飾る。もちろん、買うんだろ?」
「分からないわ」
「意地が悪いな。君だけだってことだよ、みちる。選り取り見取りなんじゃなくて、掃いて捨ててるんだよ。君以外はみんな、ね」
「……なんだか変な日本語ね。掃いて捨てるって、それで使い方合っていたかしら?」
「さぁ?生憎僕は国語が苦手でね。だから、単純な物言いしか出来ないんだ」
「……例えば?」
「君を、愛してる。……とかね」
「そう」
「そうって。それだけ?」
「それだけよ。だって、例文でしょう?」
「みちるっ」
「やっ。ちょっとはるか。苦し――」
「愛してる」
「…………」
「……みちる?」
「そんな風に、囁かれたら。そうも何も、言えないじゃない」
「あはは。ごめん。でも、機嫌、直ったみたいだね」
「もうっ。……バカ」
(2009/9/6)
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