40.仙人(不二佐)
「ねぇ、佐伯」
「何だい?」
「ずっと疑問に思ってたんだけどさ。おじいって幾つ?」
「……さあ。幾つだろ」
「スミレちゃんと知り合いみたいなんだけど。それにしてはなんか見た目の年齢が大分離れてるように思えるんだよね」
「スミレちゃん?」
「ああ。竜崎先生。うちの顧問だよ」
「ああ、あの人。……ていうか、あの人って幾つ?」
「幾つなんだろ。でも、僕らの親より上であることは確かだよ。確か、越前くんの父親もスミレちゃんの教え子だから」
「へぇ。じゃあ、案外おじいと同い年だったりしてな」
「えー。それはおいじの見た目がアレってこと?それともスミレちゃんのほう?」
「どっちにしても、不二んとこの顧問は凄いってことになるよな」
「……そうだね」
「うちのおじいが仙人だとするとさ。その、スミレちゃん?は、なんだろうな」
「おじいが仙人!ぴったりだね。あの髭といい飄々とした雰囲気といい」
「だろ?でも、煩悩の塊だけどね」
「煩悩、ね。まぁ、煩悩が無いと長生きは出来ないと思うけどね、僕は」
「へぇ。じゃあ不二は早死にするのかな?」
「何で?」
「だって無欲だろ?」
「そう見える?」
「ああ。違うのかい?」
「まぁ、今は充たされてるからね。でも、基本的には煩悩の塊だと思うよ。嫌なことはしないし。……欲しいものは何が何でも手に入れるし」
「……欲しいもの?」
「そう。例えば佐伯、とか」
「……俺、ものじゃないんだけど」
「あれ?そこ?」
「不二は俺を手に入れて満足してるってことか」
「そう。そういうこと。佐伯は?」
「え?」
「僕を手に入れて。満足してる?」
「俺は……まだかな」
「贅沢だね」
「そうか?当然だと思うけど」
「僕だけじゃ足りないんだ」
「そうじゃなくて。こうしてたまにしか会えないのがね、俺の満足の妨げになってるんだよ」
「じゃあ、充填しよう」
「何?」
「次、会うまでに佐伯が枯渇しないように。その満足のゲージをメーターが壊れるくらいにまでいっぱいにするんだよ」
「不二。何を言ってるのかよく分からないんだけど」
「これから分かるよ。だから、早く佐伯ん家、行こう?」
「……ちょっ、不二。待てよ。今、まだ昼だぞ?」
「一日かけて充填!」
「おい!不二っ……」
(2009/10/14)
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