54.ゴミだらけの部屋(はるみち)
「荷物、これだけ?」
「うん?うん」
「残りは?」
「ゴミ」
「えっ?これ、全部?」
「そう。これ、全部」
「だって……全部捨てたらどうやって生活するっていうの?」
「何言ってるんだよ、みちる。これから一緒に暮らすんだろ?それなのに、どうして僕だけのものを持ち込まなくちゃいけないのさ」
「どうしてって」
「君と二人で暮らすんだ。これから必要なのは二人のもの。そうだろ?」
「でもこれ全部捨てたら……」
「だから、さ。……そうだな。明日にでも買いに行こうか?二人のものを」
「はるか……。でも。じゃあ、このダンボールの中に入ってるものは?」
「ああ。レース関連のものだよ。あと、君から貰ったものとか。君が気に入ってるものとか。今の僕に必要なものは、これくらいだから。ああ、服は別だけど。それこそ、生活出来なくなる」
「けどなんだか勿体無いわね」
「じゃあ、オークションにでも出す?僕のサインでも入れて」
「嫌よ。貴女のものを他の子が持つだなんて」
「それならみちるが引き取る?」
「それって。結局私たちの新居に運び入れるってこと?」
「いや。実家の方に送ってもらって構わないけど。……君が、僕のものを欲しいなら、ね」
「……貴女を追いかけていた昔なら欲しかったかもしれないけれど。今は。そうね。はるかの言うとおりだわ。今は、貴女が居るから」
「やっぱりね。……なぁ、みちる。今夜は泊まってくだろ?こんなゴミだらけの部屋だけど。一応、思い出の詰まった部屋だから。最後に、ここで。想い出に浸らないか?」
「よくってよ。でも、想い出に浸れるかしら?」
「どうして?」
「だって……。目の前のはるかで一杯で、きっと他の事なんて考えられないもの」
「…………」
「はるか?」
「……それは。予想外の、発言、だな」
(2009/9/7)
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