77.誤解を招く(蔵飛)
「やめてもらえませんか、ああいう行動。誤解を招く」
「ああいう行動?どういう行動だ?」
「ムクロ。トーナメント、見ましたよ」
「ああ。……別に誤解などしないだろう。あいつは俺にそういう感情は抱いていない。それに、俺の過去を見た。お前とのことも知っている」
「彼女が誤解するんじゃない。オレが、誤解するんです」
「お前が?……誤解と分かっているなら構わないだろう?」
「それが誤解ではないのかもしれないと、時々思うから、嫌なんですよ」
「何故そんなことを思うんだ?」
「貴方の気持ちが見えないから」
「お前……コレだけ好き勝手しておいて、俺の気持ちが見えないだと?」
「好き勝手しているのはオレの気持ちです。貴方の気持ちじゃない」
「馬鹿か?嫌ならわざわざ好き勝手されに来たりはしない。……俺の性格くらい分かってるだろう?」
「分かってますよ。でも。……飛影こそ、オレの性格、分かってますか?」
「…………」
「考えたことも、ないでしょう。……あまり、この状態が続くようだと。オレも考えないといけなくなります」
「何?」
「籠の中の鳥は、嫌でしょう?」
「お前、まさか」
「オレだって、貴方に嫌われたくはない。けど、あまり貴方がオレの気持ちを無視するようだと」
「無視などしていないだろ?」
「拒絶していないだけだ。それじゃあ無視しているのと変わらない」
「そういうお前こそ、俺の気持ちを無視しているんじゃないのか?」
「無視?ぶつけられてもいないのに?」
「…………」
「飛影。貴方は――」
「もういい」
「?」
「もういい。分かった。好きにしろ」
「好きに?」
「だから。俺を監禁するなり何なり、お前の気の済むようにすればいいと言ってるんだ」
「……分かって、ないじゃないですか」
「蔵馬?」
「それじゃあ今までと同じだ。……だったらオレは、何もしない」
「なん、だと?」
「だから。何もしないって言ってるんです。帰ってください。いや、それも違うか。居ても構いません。好きにしててください。……オレは、溜まった仕事を片付けますので」
「おい、蔵馬」
「…………」
「蔵馬っ」
「痛っ。飛影、髪ひっぱ――」
「――っまえは。どうして。拒絶しないことを一つの答えだと思えない?」
「貴方は、どんどん変化している。昔は総てを拒絶して独りで生きてきたかもしれない。けど。今の貴方は違う。だからそれを貴方の選択だとは思えない」
「ちっ」
「……ほら、そうやって。結局出て行く。……オレが誤解をするのは貴方が。オレから逃げるための場所に彼女を選んでいるからなんですよ。貴方は、気付きはしないでしょうけど、ね」
(2009/9/14)
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