81.そんな目で見るな(蔵黄泉)
「こんな事に何の意味があるというのだ?」
「……気にするな」
 呟いて、閉じられた黄泉の目を布で覆う。
 元々見えていないのだから、黄泉からすればこれは無意味な行動だろう。
 だが。目隠しをするのはお前じゃない。オレだ。
「っは」
 南野でいる時はよく喋る黄泉も、妖狐の姿になると無口になる。理由は分からないが。
 いや、単に会話の必要の無い行動をするときにオレが妖狐になっているだけなのかもしれない。まぁ、そんなことはどうでもいい。
 指と舌で黄泉の体を弄る。黄泉は詰めた息を吐きながら、オレに身を預ける。目隠し越しに、オレを見つめながら。
 そう。黄泉はいつもオレを見ている。どこまでも落ちていきそうな暗い闇で。ありもしない目で。
 ――そんな目で、オレを見るな。
 だから、オレは目隠しをした。見せたくないわけじゃない。見たくないんだ。
 罪悪感?そんなものじゃない。ただ、あの頃の感情が甦るだけだ。
「蔵馬、どうした?」
「……悪い。今日は手荒くなる」
「なっ、ぁ、ああっ!」
 無理矢理にその体に捻じ込む。痛みに体を反らせる黄泉は、それでも目だけはオレに向いている。
 布で覆っていても、分かる。黄泉は今、その闇を見開いている。
 そんな目で見られたら。お前を殺したくなるだろう?
 折角の策も意味を持たず。甦ってしまった感情をどうにか熱に変える。
「黄泉」
 どうしてお前はそんなにも。
 オレに殺意を抱かせる――?
(2009/10/28)
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