８５．自粛（外部ファミリー）
「みちる。はるかは？」 「自粛中」 「何を？」 「家で私にベタつくのを」 「珍しいこともあるんですね」 「せつながあんまりにも五月蝿くするから」 「私の所為ですか？」 「そう。きっとね。……あーあ」 「退屈ですか？」 「とっても」 「はるかは何をやってるんでしょうね？」 「知らないわ。部屋にも入れてくれないんだもの」 「随分と徹底してるんですね。昨日、あなたとほたるではるかの取り合いをしていたのが、トラウマにでもなったのかもしれませんね」 「まさか」 「とても、楽しんでいるようには見えませんでしたよ。あなたも、ほたる相手に大人気ない……」 「ああでもしないと、はるかったらすぐにほたるを甘やかすんですもの」 「甘やかすのは自分だけにして欲しい、と？」 「せつなさん？」 「別に私はあなた方の関係を否定しているわけではないんですよ。ただ、ほたるの前では少し抑えて欲しいと」 「……それは、あなたの前では好きにしていてもいいということかしら？」 「私に見られてもいいのなら、構いませんけど」 「他人の目なんて私たちには関係ないわ」 「ほたるの目だけは気にしてください」 「ええ。それだけは気をつけるわ。……それじゃあ遠慮なく私は――」 「みちる！」 「きゃっ。……ちょっと、はるか。どうしたの？苦しいわ」 「ああ、ごめん。っと。あ。せつな。……えーっと、これは、その」 「構いませんよ。ほたるの前でなければ」 「ですって」 「ああ、そう。じゃあ、ちょっとみちる借りてくよ。いや、返さないけど」 「どうしたのよ、はるか。そんな、興奮して。自粛してたんじゃなかったの？」 「なんだよ、自粛って。それよりさ、来てくれよ。ビックニュースなんだよ。ずっと部屋で連絡待ちしててさ」 「え？じゃあ、貴女が今まで部屋に篭ってたのって――」
(2009/11/5)