86.証拠隠滅(はるみち)
「……よし、っと」
「あら。何が良いのかしら?」
「みちる。……お帰り」
「ただいま。……はるか、お料理?」
「いや、まぁ、ね」
「フライパンの中、焦げていてよ?」
「そう?ああ。本当だ。ちょっと考え事してたからかな」
「……はるかさん?」
「ごめん。苦しかったかな」
「苦しいなんてものじゃないわ。面白かったからいいけれど」
「別に笑わせるつもりはなかったんだけどな」
「じゃあ怒らせたかったのかしら?」
「いや。そういうわけでも」
「それで?」
「ええと。どうしても、断りきれなくてさ。折角書いてくれたのに読まないっていうのも、悪いだろ?」
「そうかしら。特定の人がいるのなら、それを理由に一切を拒否する事だって出来てよ?」
「君はね。でも僕はほら、一応さ。彼女達からの人気で成り立ってるわけだし」
「アイドルみたいなことを言うのね。貴女の人気は実力でしょう?」
「まあ、それはそうなんだけど」
「私だけじゃ、不充分なのかしら?」
「まさか。君に愛されるのなら、僕はそれで充分だよ」
「だったら」
「だから燃やしただろ?」
「それは証拠隠滅のためではなくて?」
「貰う時に、読むけど答えはノーだって言ってはあるんだ」
「だったらどうして燃やしたの?」
「君に変に勘繰られたくなかったんだよ」
「燃やす方が逆に勘繰るわ」
「……そういうもんなの?」
「そういうものよ。だから、隠さないで」
「……分かったよ。じゃあ、怒らないでくれるかい?」
「それは……その時になってみないと分からないわ」
「…………。……まあ、いいか」
(2009/10/28)
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