88.祝、解禁(不二塚)
「ねぇ、手塚。もう腕は治ったんだよね?」
 彼の服を脱がし、顕わになった肩に唇を落とす。跡部との試合で肘を庇ったために故障した肩は、最後に抱いた時とは違ってもう腫れていない。真っ白な肌。
「ああ。そのためにオレはわざわざ九州まで行ったんだ」
 僕に押されて、抵抗もせずに彼はベッドへと倒れた。まだ昼なのに珍しいな、と思ったけど。きっと彼もそれだけ溜まっていたのかもしれない。
 溜まってた?なんか嫌だな、その言い方。僕は手塚じゃないと駄目なのに。
「ねぇ。治ったんなら、もう、いいよね?」
「駄目だったら、今頃お前を殴り飛ばしている」
「それもそうか」
 彼の言葉に思わず笑う。けど、僕が言ってるのはそんなことじゃなくて。
「でも、それだったら殴り飛ばされても僕はするから。そうじゃなくて」
 言葉を切ると、僕は彼を裏返した。腰に腕を回して持ち上げ、四つん這いの恰好にさせる。
「お、おい。不二」
「バックって。ずっとやってみたかったんだ。だけどほら、体重を支えたりするの大変かなって思って我慢してた。でも、もういいよね?」
 彼の上に覆いかぶさり、ベルトに手をかける。だけどそこから先に進む前に、彼の猛烈な抵抗にあってしまった。
「ふざけるな」
「何で。いいじゃない。一回だけだからさ」
 ベッドの隅に逃げた彼をもう一度うつ伏せようと手を伸ばす。けど、払いのけられるかもしれないと思っていた手は彼に掴まれ、逆に引き寄せられてしまった。
 思いがけない彼の行動にバランスを崩した僕は、その胸の中に倒れこむ。
「別にするのが嫌だといっているわけではない」
「手塚?」 
 彼の胸から顔を上げる。目が合うと、彼はゆっくりとした動きでキスをしてきた。
「それじゃあ、お前の顔が見えないだろう?」
 真っ赤な顔で、でも僕から目をそらさずに言う。それが可愛くて嬉しくて、僕は彼の胸に飛び込んでしまった。
「っ」
 その勢いで、彼が壁に強かに頭を打ちつける。そのことに、ごめん、と笑いながら言うと、彼も痛みに片目を瞑りながらも口元を緩めて笑ってくれた。


「ねぇ、手塚。そんなに僕の顔が見たいんだったらさ。いい方法があるよ」
「何だ?」
「カ・ガ・ミ。そうすれば僕の顔も、君自身の顔だって見れるよ」
「バッ……。ふざけるな!」
「あ。やっぱり?」
(2009/10/27)
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