９０．はにかむ（不二リョ）
「リョーマって笑わないよね」 「そんなことないっすよ」 「手塚みたい」 「だーからっ、そんなこと無いって言ってんじゃないっすか」 「まぁ、手塚は表情自体があんまし変わんないからね」 「そうゆう意味じゃなくって！」 「はいはい。怒らない、怒らない。……でも、ほら。これ見てごらんよ」 「うっわ。キモ……」 「そう？可愛いよ」 「そうじゃなくて、この写真の量！しかも俺ばっか……」 「それはそうだよ。この箱、リョーマの写真しか入れてないんだから」 「…………」 「あ。大丈夫。気に入ったのはちゃんと、ほら、アルバムに仕舞ってあるからさ。つまりこの箱に入ってるのは失敗作。あ。リョーマがってことじゃないよ。ボ僕の写真の腕がね」 「…………」 「リョーマ？」 「やっぱアンタ、気持ち悪いよ。乾先輩並みに」 「汁とは一緒にしないでよ」 「汁って……」 「っていうか、少しははにかんだりしない？フツー」 「しませんよ。こんなに撮られてたら。気持ち悪さのほうが先にたちます」 「ふぅん。可愛くないの」 「別に俺、可愛くなろうとなんてしてませんから」 「まぁそういうところが可愛いんだけどね」 「……どっちだよ」 「ふふっ。……ああ、でね。この写真。見てみなよ」 「さっきから見てますけど？」 「だからさ。笑顔、全然ないじゃない」 「そうっすか？」 「君の中では笑ってるつもりだろうけど。ぱっと見の印象としてさ。どう？」 「それは、まぁ……」 「でしょう？リョーマの写真は全部そう」 「全部って……。これ、全部っスか？」 「あっちのアルバムも含めてね。笑ってるのなんて１枚も無いよ」 「……ふぅん」 「ふぅんって」 「だって俺にはカンケーないじゃん」 「そうでもないよ」 「何で？」 「ねぇ。笑ってよ」 「何で」 「いいから、ほら。一枚だけでいいからさ。僕に笑った顔、取らせてよ」 「だから何で」 「いいから。ね？それとも、泣いた顔撮られたい？」 「……それ、どういう」 「さぁ？どういう意味だろう」 「…………」 「どっち選んでもいいよ。どうする？」 「……笑い、ます」
(2009/10/22)