98.天才(はるみち)
「天才レーサー、か」
「はるか?」
「天才なんて。世間につられてそんなこと言ってるけど、本当は才能なんて信じてないんだ。いや、信じていないというのとは違うか。ないものだと思いたいんだ」
「どういうこと?」
「努力の賜物なんだ。この能力(チカラ)は、天から授かったものじゃない。僕自身が生み出したものなんだって。……君も、そうだろ?」
「どうかしら。私はどっちでも構わないわ。でもヴァイオリンを弾くことも絵を描くことも好きよ。その気持ちだけは私のもの。それで充分。はるかもそうなんじゃなくて?」
「僕は……。僕は、どうだろう。好き、なのかな。そう言われると良く分からないな。風になりたくて。その一身で……。もし他の競技で風になれることができるなら、僕はそれに転身するかもしれない」
「そこに貴女の能力がなくても?」
「……そうか。そうだな」
「折角やりたいことと持っている能力が噛み合ったんだもの。そんなこと、考えるだけ勿体無いわ。それに。才能だって磨かなければ錆び付いてしまうものよ」
「……じゃあ、行くかな」
「はるか?」
「折角の天気だし、その才能を磨きに、ね。みちるも行くだろ?」
「それって単なるドライブなんじゃなくて?」
「じゃあ僕一人で行こうかな」
「行かないなんて言ってないでしょう。もう」
(2009/11/10)
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