９９．表情と台詞が不一致（はるみち）
「好きよ、はるか」 「僕も、好きだよ」 「はるかさえいてくれればいい」 「そうだな」 「私今、倖せよ」 「……僕も。倖せだよ」 　本当に？ 　倖せだと言う彼女の表情に、私はいつも問いかけたくなる。 　どうしてそんな、辛そうに微笑むの？本当は倖せじゃないの？ 　そう思うけど、口には出せない。もし私の予想通り、言葉が嘘で表情が本当なのだとしたら。余りにも、辛すぎるから。 　今のはきっと私の見間違い。そうに違いない。 　何度自分に言い聞かせたか知れない。それでも、やっぱり信じたいから。 　いつか心から微笑って倖せだよと言ってくれるまで。 「ねぇ。はるかは倖せ？」 　何度でも彼女にその言葉を紡がせる。
(2009/10/13)