217.茨の花道(はるみち)※スターズ198話
「これが、僕たちの、戦士としての花道になるのかな」
 暗闇の中、私の手を探りあてると、はるかが呟いた。
 指先に絡まるだろうと思っていたはるかの手は、少し上、私の手首にはめられているリングに触れた。それはまるで自分の体の一部であるかのように重量を感じないけれど、どうやってもはるかの温もりは伝わってこなかった。もどかしさに、私から指を絡める。
「この作戦がどちらに転んだとしても、結局、僕たちの末路は一つだ。もっとも、プルートやサターンを殺めてしまったこの手で、倖せなんて掴めるとは思っていないけど」
「花道にしては、随分と薄暗いわね。それに、茨も多い」
「すまない。君にはもっと華やかな場所で」
「でも。貴女となら、それがどんな道だって、私は構わないわ。その先にあるものが、地獄への入り口だったとしても」
 緩く絡んでいた指先を深くしっかりと絡める。見上げたはるかは、暗がりで表情まではよく分からなかった。けれど、握り返してくれた手が、私への想いを伝えてくれる。
「あの子たち、祝福してくれるかしら」
「世界を救えれば、きっと。僕たちの幕引きを笑顔で見送ってくれるさ」
 暗がりのその向こう、はるかの声とは反対の方角から聞こえてくるあの子たちの声。
「来たか」
 呟くはるかが、ゆっくりと手を離す。もしかしたら、もう二度と触れ合うことが出来ないかもしれない。そう思うと追いかけてしまいそうになる。けれど。
「行くよ、みちる」
 何かを振り切るように、はるかが言うから。
「よくってよ」
 伸ばしかけた指先を拳に変えると、私は強く頷いた。
(2010/03/16)
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