218.試作品(蔵黄泉&修)
「黄泉。頼みがあるのだけれど」
「お前が?俺に?」
「他に誰が誰に頼むというんだ?」
「それも、そうだな。いや、珍しいこともあるものだと」
「嫌か?」
「そんなことあるわけないだろう!」
「じゃあ頼みを聞いてくれるんだな?」
「勿論だとも!」
「だったら黄泉。一度死んでくれないか?」
「……は?」
「正確には瀕死の状態だ。なってくれるか?」
「くら、ま?」
「いや。この試作品の薬草が、どれだけ効くのか調べたいんだ。少しずつダメージを多くして試していくのもいいが、面倒だろ?だったら瀕死の状態からどれだけ回復するかを見たほうが一度で済む」
「……蔵馬。リスクは考えているのか?」
「オレが信じられないのか?」
「信じるとか信じないとかではなく、だな」
「大丈夫だ。殺しはしない。だから薬草が思ったほど効かなくても、時間をかければいずれ回復する」
「…………」
「嫌か?」
「…………」
「それならもうお前には何も頼まない。そこらへんの妖怪でも使って実験でもするさ。そう、全快するまで付きっ切りでな」
「なっ……」
「嫌なんだろ?」
「……本当か?」
「何が」
「付きっ切りというのは」
「……まぁ、経過を見なければならないからな」
「お前、仕事は?」
「まぁ、2,3日で回復するだろうから、盆休みで充分だ」
「本当なんだな?」
「しつこい。どうする?死ぬか?やめるか?」
「瀕死なんだろう?」
「ああ。そのつもりだ」
「……そのつもり?」
「お前、昨日修羅くんと喧嘩したんだってな」
「あ、ああ。……え?」
「修羅くん。いいってさ。思う存分、黄泉をボコボコにしてやってくれ」
「うんっ。……パパっ、昨日のボクのおやつを食べた恨みだっ!」
「ちょっと待ってくれ、修羅。蔵馬、助けっ」
「パパ、覚悟っ!!」
「ぐあああああっ!!」


「すっきりした?」
「うんっ。でも、ちょっとやりすぎちゃったかな?」
「大丈夫。死んでなければそれでいいんだ。あとはオレが治すから」
「……ねぇ、蔵馬」
「ん?」
「まだ魔界にいるんだよね?」
「ああ。黄泉の治療をしなくちゃいけないからね」
「じゃあさ。パパが治るまで、ボクと遊んで?」
「……まぁ、いいか。体の傷が治るまで、意識を戻させなければいいだけの話か。……いいよ、遊ぼう」
「やったあ!」
(2010/01/09)
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