232.気高さ(不二真)
「皇帝ともあろう人が、ね」
 両腕をベッドに縛られ目隠しをされた状態で、下半身を曝している真田に、不二は言った。
 コート上での気高さなんて微塵も無いな。
 真田に見えないのをいい事に、思わず笑みが品の無いものになる。
「ねぇ。そろそろ触って欲しい?」
 内股を触れるか触れないかの柔らかさで撫でながら、不二はその耳元で囁いた。真田は当然無言だったが、触れてもいないのに立ち上がっているそこからは先走りが零れていた。
「素直になればいいのに」
 デジタルカメラを構え、その姿をデータに収める。
 こんな醜態を記録されてることなんて、真田は知らないんだろうな。
 そう思い、不二はますます笑ったが、記録されていることを知った方が真田の羞恥を煽ることになるのではと思い直し、デジタルカメラを置くとシャッター音のする携帯電話を取り出した。
 カシャリとデジタルな音が静まり返った部屋に幾度も響く。
「不二っ、まさか貴様」
「僕の趣味はカメラだからね」
「やめろっ」
「素直になったら、やめるよ。データも消してあげる」
 勿論、携帯電話の分だけだけど。と、そこまでは口にせず、不二は言った。
「どうする?」
 問いかける不二に、それでも真田は何も答えない。だが、触れることを止めてしまったというのに、その腰は不二の手を探して揺れていた。
「ねぇ。これは君のための条件なんだよ?データを消すって言い訳があれば、おねだりしやすいだろ?」
「くっ」
 人間、快楽の前では気高さも何も無いもんだな。
 歯軋りをした後で薄く口を開いた真田に、不二は思った。
「頼む、不二。触って、くれ」
「いいよ」
 だがきっとそれは、他人から優しいといわれている表情を真田に対して作れない自分にもいえることなのだろうと。薄く笑いながら。
(2010/01/20)
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