237.うんちく(外部ファミリー)
「みちる。紅茶、飲みますか?」
「そうね。いただくわ」
「……はい」
「ありがとう」
「ようやく解放されたんですね」
「解放?何が?」
「はるかですよ。モータースポーツのことになると専門知識が止まらなくなりますから」
「そうね」
「お疲れなんじゃないかと思って」
「別に。疲れてなんかいないわ。モーター回転数とかステアリングの感触とか、何がそんなに面白いのかは分からないけれど。分かりやすく説明してくれているし。それに。はるかの生き生きとした表情を見ているのが好きだから」
「……聞いた私がバカでした。折角みちるがお疲れかと思ってクッキーを用意していたのですが。楽しんできたんだったらいりませんよね?」
「せつなさん、それは少し意地悪なんじゃなくて?知らなければよかったことを知ってしまったのは、あなた自身の責任よ?」
「冗談ですよ。食べましょう。一人でお茶をしていても、詰まらないですからね」
「ありがと。……そういえば、せつな」
「はい」
「どうして、はるかがモータースポーツのことを話し出すと止まらなくなるって知っているのかしら?」
「それは……。はるかがあなたに嬉々として話しているのを」
「見てはいないはずよ。はるかは私にもちゃんと分かるように、マシンの写真なんかの資料がないと話さないもの。つまりはあの人の部屋でしか話をしないということ。さて。他に言い訳は?」
「……みちる。クッキー没収しますが、構いませんよね?」
「冗談よ。でも、せつなにも話していたなんて意外ね」
「あなたのせいですよ、みちる」
「私の?」
「あなたがコンサートで一ヶ月もいなくなるから。無理矢理相手をさせられたんです。勿論、会話の、ですが」
「でも私、殆ど毎日はるかと連絡を取っていたわ」
「そのとき、はるかは何か話していましたか?」
「……そうか。私の事を聞いてばかりだったわ」
「貴重な時間を無駄にしたくなかったんでしょうね」 「それって、せつなの時間なら無駄にしてもよかったってこと?」
「きっとそうなんでしょう」
「ごめんね、せつな」
「あなたが謝ることはないですよ。ただ、そうですね。申し訳ないと思うなら、もう少し――」
「あっ、みちる。せつなも。なんで二人だけでお茶してるんだよ」
「ごめんなさい、はるか。今ちょうど呼びに行こうとしてたところなの」
「本当か?」
「本当よ。ほら、今紅茶入れるから。座って」
「ったく。酷いよな、二人とも」
「……もう少し、抑えるなんてことは、無理ですね」
「ん?何か言った?」
「なんでもありません」
(2010/02/11)
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