238.不毛(不二ヤマ)
「今年は、お前にとって不毛な一年だったな」
「……不二くん?」
「竜崎先生との会話、聞いちゃった」
「そう、でしたか」
「大和くんだけが強くても、結局、団体戦はそれだけじゃ駄目なんだよね。あーあ。僕をレギュラーに入れておけば。大和くんと手塚くんと僕でシングルス三勝出来たのに」
「一年生は、三年が引退するまで」
「手塚くんは?」
「彼は例外です。ボクよりも、強いですから」
「僕、一応手塚くんに勝ったんだけどな」
「あれ? それは忘れたい試合だったんじゃありませんか?」
「そう、だけど」
「それに。不二くんはボクにはまだ勝ってませんよ」
「それもそう、だけど」
「それと。もう終わったことです。今更とやかく言ってもしかたがありませんよ」
「……なんだか今日の大和くんは、意地が悪いね」
「盗み聞きした罰ですよ。……でもね、不二くん。竜崎先生はああいってましたけど、ボクは不毛な一年だったとは思っていません」
「どうして? だってレベルアップに繋がるような試合もろくに出来なかったのに」
「ボク自身はね。でも、青学としては、手塚くんや不二くんのようなこの先の青学を全国に導いてくれるコたちを見つけることが出来た」
「けど」
「ボクだって、後輩を育てる楽しさや難しさを学ぶことが出来た。それだけでも、有意義な一年、いや、半年でしたよ」 「大和くん……」
「それに。この半年を不毛なものにしてしまったら。不二くんとの関係はどうなるんです?」
「……それも、そうだね」
「だから。不二くんが気にすることはないんですよ。それでも気にしたいというのなら……そう、青学を全国へと導いてください」
「手塚くんと一緒に?」
「二人で、じゃなく、チームで。ですよ?」
「ああ、うん。分かったよ、大和くん」
(2010/04/30)
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