243.悪行三昧(蔵雪)
「蔵馬さんは優しいです」
「それは気のせいだよ。雪菜ちゃんはオレの昔を知らないから。……これでも、盗賊としては魔界で怖れられていた方だったんだ」
「悪いこと、していたんですか」
「そりゃあもう、悪行三昧。気に入った宝があれば何をしてでも奪ったし、気に入らない奴がいればどんなことがあろうと殺してきた」
「気に入った女性(ヒト)がいたら、ものにもしたんですか?」
「気に入ったというか、手頃な奴がいればって感じだったかな。っと。こんな話、君には相応しくなかったね」
「そんな」
「兎に角、オレは完全なる妖怪だよ。人間から見たら、顔をしかめたくなるような」
「でも、蔵馬さん。忘れていると思いますが、私も妖怪なんですよ?」
「……雪菜ちゃん?」
「蔵馬さんは、優しいです。他の人はどうだか分かりませんが、私には優しい。私はそれだけで充分です。今さえあれば。蔵馬さんの歴史の総てなんて、必要ありませんから」
「……このまま、オレが君を襲っても?」
「蔵馬さん。もう一度言いますが、私も、妖怪なんです」
「そう。そうか。そうだったね。じゃあ――」
(2010/02/07)
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