247.大ファン(はるみち)
「誰だ?今の男」
 ようやく解放された私の元へ、憮然とした表情のはるかが近づいてきた。
 他の人と少し話をしているだけで分かりやすいほどにヤキモチをやくだなんて子供だわ、なんて思ったけれど。私も似たようなことがあるのであまり笑えないな、と思った。
 といっても、ここまであからさまな態度は取っていないとは思うけれど。
「私の大ファンなんですって。ヴァイオリンもそうだけど、絵画も」
「それって、みちるの生み出したものじゃなく、みちる自身に惚れ込んでるってことだろ?……危ないな」
「危ないだなんて。貴女が守ってくれるんでしょう?」
 時折触れるはるかの左手を取って、私の左肩にのせる。
 驚いたはるかに、ね、と笑って見せると、そりゃあ、と口ごもりながらもしっかりと私の肩を抱き寄せてくれた。
「それに、貴女のフリークだって、きっと貴女自身に惚れているんだと思うわ」
「危ないと思うかい?」
「思わないわ。だってはるかは、私しか眼中にないって、分かっているもの」
 それでも、いい気はしないけれど。と、口には出さず内心で呟く。けれど。
「その割には、毎回機嫌を損ねてるみたいだけど?」
 しっかりとはるかは私の心中を言葉にすると、ニヤリと笑った。
「分かってるなら、その手、離さないで?例え、貴女のフリークの子が来たとしても。私の大ファンだという男性(ヒト)が来たとしても」
「了解」
 その肩にもたれながら言う私に、はるかは少し呆れたように言うと、それでも更に強く私の肩を抱き寄せた。
(2010/01/15)
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