250.ゲリラ(はるみち)
 店先から鈍色の空を見上げていると、ごめん、という声と共に柔らかなものに視界を塞がれた。濡れちゃったな。視界の向こうから、声が聴こえる。
「この雨は、はるかのせいじゃないわ」
「今日は一度も使ってないけど」
 もしにおいが染み付いてたら、ごめん。私の言葉を無視して、はるかが続ける。
 頭に掛けられたスポーツタオルを首までおろすと、本当に、申し訳なさそうな顔で私を見ていたので。思わず、笑った。
「なに、笑ってるんだよ」
「はるか。ちゃんと聞いて。この雨は、貴女のせいではないと私は言ったのよ?だから。そんな顔しないで」
 タオル、ありがとう。付け加えて、今度は違う種類の笑みを渡す。
 はるかは、どうするの。聞きそうになったけれど、未だに何処か落ち込んでいるはるかに、私はその言葉を飲み込んだ。
 嫌だったら、部活後のはるかに腕を絡ませたりはしないのに。そういうとこ、すぐに忘れるんだから。
 しょうがないわね。思いながら髪を拭き始めると、はるかはようやく口元を緩めてくれた。
(2010/03/30)
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