266.底なし沼(はるみち)
 まるで底なし沼にでもはまったかのよう。
 音も無く、沈んでいく。徐々に体の自由は奪われて。最後には、呼吸まで。
「はるかっ、ぁ……」
 粘り気のある水音を立てて、どこまでも深く潜り込んでいく指先。はまっているのは一体どっちなのだろう。
 それでも、お互い、底のない沼などありはしないと痛いほどに分かっている。
 底なし沼は、底があると思っているかどうかの違い。それだけでしかない。どちらにしても、いずれは何処かに辿り着く。
「……みちる」
 ただ、それでも。それならば、と思う。
 思い込むだけで底なし沼に変わるのならば。例え幻想でしかなかったとしても、いつかやってくるそのときまでは。
 これは永遠に終わることのない感情なのだと、信じて……。
(2009/10/21)
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