268.ワゴンセール(3-6)
「不二。なに、これ。セールって書いてあるけど」
「バレンタインで貰ったチョコ。いらないから」
「うわっ、ひっで。不二、貰ったチョコ売ってんの?」
「……男から貰ったのはね」
「へ?」
「友チョコなんてやってるけど。アレは女の子同士でしょう?男で友チョコってきっとないと思うんだ」
「って。まさか、このワゴンに山積みになってるの全部……」
「うん。男子から貰ったものなんだよね」
「うげぇ」
「だから、さ。英二ならただであげるよ?ほら、これなんかどう?手作りみたいだけど」
「……いい。遠慮しとく。っていうか不二、嫌なら貰わなきゃいーじゃん。貰っといて売るのって、やっぱ酷いよ」
「女の子でもたまにいるけどさ。男となるとそういうのばっかりなんだよね」
「どういうの?」
「面と向かって渡さないんだよ。断られるの分かってるから。無理矢理押し付けて走り去っていったり、机の中にギュウギュウに詰め込んでたり」
「つまり、断れる状況じゃなかったってこと」
「そういうこと」
「でもさ、これ。どうして男からだってわかんの?名前かいてないのもあるのに。もしかしたら、女の子からもらったものかもしんないよ?」
「じゃあ英二、食べてみる?」
「う……」
「女の子にはさ、ちゃんと食べて欲しいなら直接渡してって伝えてあるんだ。もらってくれるかって聞いてきた子数人にしか言ってないけど。多分、そこから広まってくれたと思うよ。去年より、直接渡しに来る子、増えてたから」
「ふーん。てか、不二そんなチョコ貰ってんだ。うらやましー」
「そう?」
「あったりまえじゃん!」
「僕は別に。好きな人から好かれればそれでいいから。逆に困るんだよね。好意に応えることが出来なくてさ」
「不二らしー。……で?」
「うん?」
「手塚から貰った?」
「英二は大石から貰った?」
「いんや。俺、あげる方だから」
「同じ。僕もあげる方」
「へー」
「意外?」 「だって不二、手塚から欲しがりそうなイメージあるし」
「そうかな。まぁ、愛情は欲しいとは思うけど」
「でも、チョコはいらないんだ」
「要らないわけじゃないよ。ただ。なんていうか。手塚って、不器用だから。そういうの、苦手だと思うんだ。苦心する姿も可愛いけどさ、でもだったら、そうやって一人で考える分、僕にぶつけてくれた方がいいかなって」
「……ふぅん」
「分かった?」
「いんや」
「だろうね」
「なんだよぉ」
「それよりさ、英二。このチョコ、貰ってくれないかな?代金は要らないから」
「……あ」
「何」
「いっそのこと、観月に送っちゃったら?」
「何でアイツなんかに」
「だって不二からだってなれば、きっとどんなんでも喜んで食べるって!」
「なるほどね。オーケィ。そうするよ。……ああ、でも」
「ん?」
「それでもし、観月が勘違いしたら。その時は、英二がどうにかしてね」
「ゲ。マジ?」
(2010/02/18)
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