280.馬の耳に念仏(外部ファミリー)
「はるか。どうしたんですか? 洗い物なんて珍しいですね」
「ん? ああ。ほたるがさ、お腹空いたって言うから。おやつ食べてたんだ。で、今はお腹一杯になって寝てる」
「そうですか。って。はるか! そのお皿っ」
「え?」
「それは来客用のものですよ。幾らしたと思ってるんですか!」
「なんだよ。来客用も何も、皿は皿だろ?」
「いいですか、はるか。このお皿はアンティークのもので――」
「無駄よ、せつな」
「みちる……。お帰り」
「ただいま、はるか。……せつな。この人に食器の話をしても無駄だわ。価値がわからないんですもの」
「価値って。皿としての価値は認めてるさ。だから使ってるんだろ?」
「はるか。それ本気で言ってるんですか?」
「だから言ったでしょう? はるかに幾ら説いても無駄なのよ」
「なんだよ。使って欲しくないなら、どっかに大切に仕舞っておけよな。ったく」
「それはこっちの台詞です! どうしてわざわざこっちの棚から取ったんですか。いつも使っている食器はあちらにあるでしょう?」
「しょうがないだろ」
「何がしょうがないんですか」
「ほたるが、これ綺麗だから使いたいっていったんだ」
「ほたるが?」
「せつなだったら、駄目だって言えるのか?」
「それは……」
「私だったら、喜んでしまうかもしれないわね」
「みちる?」
「だって、これを綺麗だと思ったんでしょう? それって、目が利くってことだわ。まだ多くのものに触れていないのに、あの子は本物が分かるのよ」
「だろ?」
「とかいって、はるかはこのお皿がどんなものか、どうせ分かっていなかったんでしょう?」
「それなりに高価なものなんだろうなっていうのは分かってたさ」
「こっちの棚に入っているものね」
「……まぁ、そういうこと、なんだけど」
「ですって」
「はぁ」
「もう、いいだろ? 使っちゃったもんは今更さ。綺麗に洗うから」
「分かりました。でも次は」
「ほたるが使いたいって言うのに、駄目だって、せつなは言えるのか?」
「……ほたるの方に、後で言っておきましょう。はるかに話すより、きっと理解してくれるはずですから」
「……なんだよ、それ」
(201/05/06)
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