281.生半可(はるみち)
「本当に、いいの?」
 潤んだ目で僕を見つめながら、みちるは言った。
「それはこっちの科白だよ」
 みちるの頬に手を触れ、本当にいいの、と同じ言葉を返す。
 そのことに対してみちるは何も言わなかったが、かわりに僕の手に自分の手を重ねると、静かに目を閉じた。
 何を促されているのかなんて頭が理解するよりもよりも先に、唇が触れ合う。
「なんか、凄く照れるな」
「慣れているほうが嫌だわ」
 額を重ね笑い合うと、僕たちはもう一度キスをした。
 自由だったみちるの手が、僕の首を柔らかく掴む。
 生半可な覚悟じゃ無理だとは思ってたけど。戦士への道を選んだ時よりも、遥かに勇気がいるもんなんだな。
 唇を重ねたままだから視界はなく、手探りでみちるの服を脱がせながら。そんなことを僕は思った。
(2010/01/10)
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