282.異論は許さない(蔵飛)
「お前はもう、百足に来るな」
 オレの部屋に土足でずかずかと上がりこんできたかと思うと、飛影はオレを睨みつけるようにして言った。
「どうしてですか」
 聞き返すと、鼻を鳴らされた。
「あなたがたまには自分で出向けって言うから、行ったのに」
「異論は許さん」
「別に、異を唱えてるわけじゃないですけど」
 きっぱりと言い切る飛影に、オレは溜息混じりに呟いた。納得はいかないけど、駄目だというのに無理矢理に行ってもその後の空気が不味くなるだけだし、と思い、オレはそれ以上の言葉を諦めた。
 そのかわりに、というわけではないけれど。飛影の肩に手を置くと、そっとその唇に触れた。
「ねぇ。オレは百足には行かないけれど。あなたはいつでもオレの所に来ていいんですからね」
「俺が、人に指図されるのが嫌いなのは知っているだろう」
「そう、でしたね」
 きっとあなたは、駄目だと言ってもオレの所に来るんだ。これからも、ずっと。
 飛影の言葉の意味を理解するころにはもう、彼はオレの腕の中からすり抜けていってしまったけれど。その行き着いた先から、じっとオレを見つめていたことに胸を撫で下ろすと、オレはベッドを軋ませながら彼の手に触れた。
(2010/04/23)
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