286.やりたい放題(星はる)
 やりたい放題だな、こいつ。
 眉間に皺を寄せながら眠る天王を見て、オレは溜息を吐いた。こいつは、オレが拒むことはないと本気で思ってる。いや、拒んだとしてもどうにかなると思ってるといった方が正しいのかも知れない。実際、今日だって仕事で疲れてるとオレは拒んだはずなのに、気がつくとこのザマだ。
「ったく。好き放題してるくせに、何が不満なんだよ」
 不満を解消するための行為で不満を溜めてたら意味がねぇだろ。……お互い。
 代償行為だと思うから、理想と現実のギャップを埋められずに不満が溜まるんだ。だから、代償だと思わなければいい。あいつを抱けない代わりにこいつを抱いてるんだって思わなければ。
 そう、思っちまったのが間違いだったんだろうな。
 あくまで代償行為だと思い続けている天王の方が賢かったってことだろう。
 それなりに愉しんでたはずのオレは、今は天王がオレを見ないって事に不満が溜まりまくってる。
 だったらオレもこいつにならってやりたい放題やってみるか?
「まさか」
 そんなこと、出来るはずがない。こいつに力で勝てないことは分かってるし、それに、最低だとは思うけど。それでもオレはやっぱりお団子が好きだから。
 振り向かない天王に不満はあっても、自分から天王を求めることはしたくない。
 って。そうか。結局。
「やりたい放題やってんのは、オレも同じなのか」
 呟いた言葉が部屋に響く。そうして跳ね返ってきた自分の声に、オレは虚しく笑った。
(2010/02/04)
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