288.始末書の達人(蔵コエ)
「随分と、始末書が溜まりましたね」
「……誰のせいだと思っとるんだ」
「オレのせいですか?幽助のせいでしょう」
「お前がもっと見張っとればだな」
「それはオレの仕事じゃないですから。それに、幽助はもう霊界探偵をクビになったんですよ?そんな幽助に依頼をしているんですから、言ってしまえばこれは、自分で巻いた種なんじゃないんですか?」
「わかっとるわい。少しあたってみただけだ」
「八つ当たりだなんて、まだまだ子供ですね」
「うるさいっ。だいたいなんなんだ、お前は。行き成り入ってきて!」
「あなたが、始末書に追われてその他の業務が出来ていないと聞いたもので」
「……ぼたんか」
「いいえ、あやめさんです」
「あやめが?」
「そう。それで、オレがこうしてわざわざ、あなたの始末書を手伝いに来たんですよ」
「お前が」
「そう、オレが」
「バカを言うな。霊界の資料を妖怪のお前なんぞに任せられるか!」
「そう。ならオレは帰りますけど」
「…………」
「でもこれ、オレだけじゃなくてあやめさんの厚意も無駄にすることになるんですよね。折角人間界に来てまでオレに頼んだって言うのに」
「…………」
「ま、手伝えないならここにいても仕方がないし。帰るしかないか」
「…………」
「ねぇ、コエンマ。帰りますよ?」
「勝手にせい」
「本当に、帰りますよ?」
「お前なぁ」
「本当は帰って欲しくないくせに」
「それはお前だろうが」
「オレは帰りたくないですよ。霊界まで来るのもね、そう楽じゃないんですよ。身体にだって負担がかかる。ただでさえ、妖狐の妖気にあてられてる南野の肉体には、ね」
「だったらさっさと戻れば良いだろう」
「あなたは、そんなオレの努力を無駄にするんですか?」
「何が努力だ」
「コエンマ」
「……始末、書を。終えたら、さっさと帰れ。いいな」
「お礼は?」
「誰がするか、馬鹿者!いいからさっさと始末書に取り掛からんかっ」
「はいはい」
(2010/03/14)
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