290.準備万端(蔵黄泉)
「よし。準備はこれでいいな」
「……なんだ、この部屋は」
「何って、俺たち三人が家族水入らずで過ごすための部屋だ」
「俺たち三人?」
「ああ。俺と、お前と、そして俺達の愛の結晶である修羅だ」
「ちょっと待て」
「心配するな。俺はこの日のために、修羅が胚の段階から料理などの勉強をしていたんだ。今ではお前より上手く飯を作る自信があるぞ」
「いや、そうじゃなくて。誰と誰の愛の結晶だって?」
「修羅のことか?あれは確かに俺が産んだわけではないが、それでも俺の細胞を使っているから、間違いなく俺の子だ」
「そうだろうな。あの角なんかは明らかにお前の遺伝子を受け継いでいる」
「だろう。赤子だからまだ角は小さいが、これから成長するにつれて大きくなっていく。今は一本しかないが、もしかしたら他の場所からも生えてくるかもしれないしな」
「……何を嬉々として話しているんだ、お前は」
「我が子の将来を夢見て何が悪い!ああ、蔵馬はまだ父親という実感がないのだな。心配するな。一緒に暮らしていくうちに、きっとお前にも似てくる」
「だから。どうして修羅がオレの子供になるんだ?」
「それは勿論、俺とお前が夫婦になるからだろう」
「誰と誰が?」
「俺とお前だ。くら……」
「断る」
「は?」
「オレにそんなつもりはない」
「今更何を言ってるんだ、蔵馬。お前は婿養子になるために魔界(俺の元)に来たのではなかったのか?」
「オレはただあの時の借りを返しに来ただけだ」
「違うな。お前は変わった俺に興味があったから来たんだ。そして俺を好きになった。だから国を解散した今も俺の元にいる」
「……お前。少しは頭が働くようになったと思ったが、思い込みの激しさだけは変わってないな」
「昔の俺の面影が残っていて安心したか?」
「ああ。そうだな」
「蔵馬」
「これで心置きなく、トーナメントでお前を殺せる」
「…………」
(2010/03/04)
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