300.滑稽千万(不二観)
「不二クンっ」
 毎日毎日飽きもせず僕の前に現れる観月。そして毎日僕に試合を申し込んでくる。勝ったら付き合えという条件をつけて。
「6-0。君はもう少し、練習を積んでから僕の前に現れるべきだと思うよ」
 実践に勝る練習はないとは言うけれど、ただ単に試合だけを繰り返していたって上達するわけがない。
 何処が悪かったのか、次はどうすればいいのか、その対処法を練っては試合をする。そうしないと、進歩なんて望めない。そんなこと、マネージャー兼任の観月なら良く分かっているはずなのに。
「そんなことをしている間にも、不二クンは脅威のスピードで進化して行ってますから。一日でもデータ収拾を疎かにするわけには行きません」
 行きません、なんていわれても、ね。僕としては、どうせ試合をするのならもっと手ごたえのある奴と試合がしたいよ。
 幾ら、絶対に負けられない状況に在るとはいえ、彼程度の実力じゃ、本気を出すまでもない。
「今日は負けてしまいましたが。明日は絶対に勝ちます」
 なんて。毎日行ってる科白。接戦でもないのに、どうしてそんなことがいえるのか。全く。滑稽千万だ。
「はいはい。じゃあ、また明日」
 とは思いつつ、最近では、また明日、なんて口走ってしまう自分がいて。この徐々に慣らされていっているような感覚に、実は密かに危機感を抱いていたりする。
(2010/04/19)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送