306.通販生活(はるみち)
「はるか、またこんなもの買ったの?」
「うん?ああ。うん」
「何に使うのよ、一体」
「何って。体を鍛えるのに使うに決まってるだろ?他にどんな使い道があるっていうんだよ」
「物干し竿、とか?」
「あのなぁ」
「だって、そんなこと言って。今まで買った器具だって全然使ってないじゃない」
「体に合わないんだよ」
「今までのが全部そうだったのだとしたら、今回のもきっとはるかのお気には召さないわ。それなのに」
「何でだろうな、あの深夜の通販番組。観てると欲しくならない?」
「知らないわ。私、その時間には寝てるもの」
「そうだっけ?」
「そうよ。私ははるかといる時間にちゃんと起きているために、規則正しい生活を送っているの。それなのにはるかは」
「……もしかして、この間、映画館で寝ちゃったことを言ってるのかな?」
「やっぱり寝てたんじゃない」
「あ。いや、少しうとうとしたくらいだよ。ちゃんと観てたって」
「いつもそうなんだから」
「それよりさ、みちる。君もこれ、やってみる?」
「やらないわ。はるかも、そんなすぐに飽きるならスポーツジムにでも通えばいいのに」
「嫌だよ、そんなの」
「どうして?」
「努力っていうのは、隠れてするものさ」
「まあ。白鳥にでもなったつもりでいるのかしら?」
「そんなところかな。似合わない?」
「私は、水中でもがいている貴女も知っているから。なんとも言えないわ。……でも、はるか。それ以上たくましくなってどうするつもり?」
「どうって。そうだなあ」
「きゃっ。……ちょっと、はるか」
「こうやって君を抱きかかえて教会を歩こうかなって。どう?」
「呆れた」
「嘘はいけないな。みちる、凄く嬉しそうだけど?」
「知らないわ。自分の顔なんて、自分で見れないもの」
「そう?だったら、僕の目に君を映してみたら?」
「……無理よ、そんなの」
「どうして?」
「貴女の目をいつまでも見続けるなんて。そんなことしたらきっと」
「キスしたくなる?」
「……っ。もうしてるじゃない。バカ」
(2009/12/19)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送