307.魅了(はるみち) |
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何がそんなに貴女を魅了するのかしら。 過剰なのではないかと思われるほどのスピードでカーブを曲がるバイクに、私は溜息を吐いた。斜めになる体は、そのまま地面に擦ってしまうのではないかと気が気ではない。彼女に言わせれば、それは遠心力で吹き飛ばされないようにするために必要なことだというのだけれど。 そんなに風を受けても、受け止めきれなくてよ。 ヘルメットで顔が見えなくても分かる。彼女の感情。本当に、楽しそうだと思う。陸上をしていた時は退屈そうだったのに。こんな、下手をすれば命を失うかもしれないというのに。 フェンスを掴む手に力がこもる。彼女の、倖せは。私にとっても倖せであるはずなのに。 少しだけ、悔しいと思う。彼女の好奇心を煽り立てるものたちに嫉妬していることが。そして、私以外に夢中になっている彼女に、どうしても魅了されてしまうことにも。 |
(2010/04/13) |
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