323.転んでもただでは起きません(蔵黄泉+修)
「ねぇ、蔵馬。なんか、パパ、最近おかしくなっちゃった」
「修羅。残念な話だけど、黄泉は最近おかしいんじゃない。元からおかしいんだ」
「じゃあ、僕もそのうちあんな風になっちゃうのかな?」
「……いや、あれは後天的なものだから、大丈夫だと思うけど。……あんな風?」
「なんかね、パパ、最近よく僕に殴ってくれって言ってくるんだ」
「は?」
「しかも、殴られてニヤニヤしてる。僕、ヘンなところ殴っちゃったのかな? 蔵馬の薬で治せない? あんなパパ、ヤだよ」
「……一応、診断、してみるか」

「――というわけだが。お前、何を考えてる?」
「それはこっちの科白だ、蔵馬。ノックもなしに入ってきたと思えば、思いっきり殴るなどと」
「それはお前が両手を広げて向かってきたからだろう」
「再会の抱擁だ。人間界ではそうすると聞いたが」
「それはきっと英語圏の話だろう。生憎、俺は日本に住んでいるのでな。そんな風習はない」
「そうか……」
「で?」
「ん?」
「修羅に自分を殴らせて、お前、マゾにでもなったのか?」
「いいや。だが、これからなる」
「は?」
「お前は俺に冷たいからな。俺に対して暴力的でもあるし。だからこう思ったんだ。それが蔵馬の愛情であるのなら、俺はマゾになってそれを充分に感じようと!」
「…………」
「なかなかいい考えだろう? お前の好みに合わせてやろうという、この俺の優しさ!」
「……というか。お前に対して、愛情は微塵もないが」
「だとしても! 俺が愛情を感じていればそこに愛は生まれるんだ! ……きっと」
「そういうことは、胸張って言え」
(2010/4/12)
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